経団連くりっぷ No.140 (2001年1月25日)

貿易投資委員会 総合政策部会(部会長 團野廣一氏)/12月22日

多様な農業の共存を

−日本政府がWTO農業交渉提案を提出


日本政府は、農業貿易の自由化交渉に対する日本提案を12月21日にWTOに提出した。そこで、提案をとりまとめた農林水産省経済局の針原寿朗国際経済課長および柄澤彰国際貿易機関室長を招き、WTO農業交渉の現状および日本提案の内容について説明をきいた。

  1. WTO農業交渉の現状
  2. 1999年末のWTOシアトル閣僚会議は新ラウンドの立ち上げに失敗した。他方、農業貿易の自由化交渉は、ウルグアイ・ラウンド(UR)の合意に基づき、2000年初めより開始された。2000年には4回の会議が開催され、

    1. 年末までの各国交渉提案の提出、
    2. 各国提案をとりまとめる評価会合の2001年3月の開催、
    等が決められたが、4月以降のスケジュールは未定である。

  3. 日本提案について
  4. 日本提案は、地方の農業団体や経済界等との懇談、農産物貿易に関する世論調査、ホームページ上での意見募集、発展途上国との意見交換等を通じ、包括的な内容に仕上がった。

    1. 基本的考え方
      各国で異なる歴史的背景や自然条件を考慮し、多様な農業形態の共存を認めるべきである。そのためには、農業の多面的機能への配慮や食料安全保障の確保が必要である。
      交渉に際しては、まずUR合意後現在までの、各国のWTO農業協定の実施状況の検証をすべきである。

    2. 市場アクセス
      日本提案は、ミニマム・アクセスに加え、コメを一元輸入している食糧庁の国家貿易制度、ミニマム・アクセスを超えた輸入にかかる二次税率等、コメの総合的な国境措置・輸入管理体制を考慮し作成した。具体的には、関税水準、アクセス数量ともに、品目毎の柔軟性を確保すべきと主張している。

    3. セーフガード
      季節性がある農産品には、鉱工業品と異なる、特別なセーフガード(輸入が急増した際の緊急輸入制限)措置の発動を認めるべきである。

    4. 輸出規律
      現行ルールでは、輸出国は自国の安全保障を理由に輸出禁止ができる一方で、輸入国は輸入が義務付けられる等、輸出国と輸入国の権利・義務のバランスを欠いている。よって、輸出税の導入や輸出禁止等の輸出規律の強化が必要である。

    5. その他
      途上国や消費者・市民社会への配慮の重要性にも留意すべきである。
      また、日本政府共通の立場として、一刻も早く包括的な分野を含む新ラウンドを立ち上げ、農業交渉をその一環として位置付ける必要がある。


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