経団連くりっぷ No.141 (2001年2月8日)

貿易投資委員会 総合政策部会(部会長 團野廣一氏)/1月11日

東アジアにおける地域的枠組みが重要


貿易投資委員会総合政策部会では、民間産業界の立場から、今後のわが国通商政策のあり方について具体的な検討を行っている。この一環として、早稲田大学教授で日本貿易振興会アジア経済研究所長の山澤逸平氏より、東アジアにおいて日本が目指すべき通商政策、自由貿易協定(FTA)のあり方について説明をきいた。

○ 山澤教授説明要旨

  1. 日本にとっての東アジア
  2. 日本企業は、経済のグローバル化、情報通信革命の進展の中で、ASEANと中国それぞれにビジネス・ネットワークを構築してきた。今後、中国が国際化し、中国とASEANの政策環境が共通化することで、両ネットワークが相互に繋がることが非常に重要である。
    東アジアの安定的な発展は、日本経済の活力維持にとっても望ましい。日本は、東アジア諸国の国際化をさらに支援していく必要がある。

  3. 地域的枠組みの重要性
  4. 東アジアの更なる経済発展のためには、自由化に抵抗する既得権益グループを打ち破るため、国際的に共同で貿易・投資を自由化する仕組みを構築する必要がある。
    しかし、WTO多国間の枠組みでは画一的となるため、自由貿易協定、ASEAN+3(日、中、韓)、APECといった地域の特性に合わせた実施を可能とするような枠組みが重要となる。

  5. 東アジア地域の主な枠組
    1. 二国間FTA
      日韓、日シンガポールFTAともに、関税撤廃効果よりも、規制緩和・制度共通化等による市場統合の動態的効果の実現がより重要である。

    2. ASEAN+3
      昨年末のASEAN+3サミットで提唱された、東アジア自由貿易圏構想は、未だ十分に内容が検討されていないが、域内の経済的な相互依存関係は深化しており、ニーズは大きい。また、AFTA(ASEAN自由貿易地域)の計画の遅れ等、自由化のモメンタムが低減しているASEANに対する梃入れの意味もある。
      ただし、域外諸国からのブロック化の懸念を払拭するため、WTOのルールに従い、開かれた地域協力として推進する必要がある。

    3. APEC
      貿易・投資の自由化では期待された成果があがってない。他方、円滑化および域内の途上国に対する技術・経済支援の面では、今後も重要な役割を果たそう。

  6. 日韓FTAの推進
  7. アジア経済研究所による日韓FTAの検討では、関税撤廃効果だけでは韓国の対日貿易赤字が拡大するが、産業内分業の活発化、日韓企業間の戦略的提携、市場統合による域外からの投資促進等の動態的効果がより大きく、両国経済にとって望ましいとの結論に達した。また、交渉中の投資協定、準備中の基準・認証の相互承認等を含めた包括的な制度的な枠組みとすることで、さらに効果が大きくなる。


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