経団連くりっぷ No.141 (2001年2月8日)

貿易投資委員会 総合政策部会(部会長 團野廣一氏)/1月23日

国内制度の改革を行い、WTOの自由化、FTAを積極的に推進すべき


貿易投資委員会総合政策部会では、民間産業界の立場から、今後のわが国通商政策のあり方について具体的な検討を行っている。この一環として、東京大学の伊藤元重教授より、国際通商システムにおけるWTOの役割、自由貿易協定(FTA)への取組みの意義、日米経済関係の展望等について説明をきいた。

○ 伊藤教授説明要旨

  1. WTOの重要性
  2. ウルグアイ・ラウンドの結果、紛争処理制度が強化され日米間の紛争がWTOの下で処理できるようになった他、進出先国のローカル・コンテント要求が緩和されるなど、具体的成果があった。また、新ラウンドはアンチダンピング問題等を取り上げる好機である。
    WTOに基づく多角的な貿易自由化は、二国間や地域のFTAよりも経済的に望ましい。しかし、米国やEUが地域的な取組みに熱心なため、WTOへの求心力が弱まっている。日本は新ラウンドの立ち上げに向け積極的に努力すべきである。

  3. FTAへの積極的な取組み
  4. 他方、FTAは世界的な流れであり、国内の自由化推進にも寄与する。また、WTOでは扱っていない電子商取引や投資、通関手続等の分野を含むことができる。
    日本としても、WTOにおける自由化を促進する原動力となるようなFTAを推進すべきである。特に、締結に関しては、「実質上のすべての貿易」に関して関税を撤廃する等の条件を定めたGATT24条の規定を厳格に遵守する必要がある。
    自由化が困難といわれる農産品に関しては、日本の農業のあるべき姿を、総合的な観点に立ち、正面から議論する必要がある。農業を保護するとしても、効果の小さな関税とは異なる方法を模索すべきである。

  5. 日本シンガポールFTA
  6. 日本シンガポールFTAに関する検討会に参加したが、包括的な分野に関して、貿易・投資の自由化、基準等の相互承認、国内制度のハーモナイゼーションとさまざまなレベルで議論ができた。
    検討会に産業界および学界の民間人が参加し、国内の利害関係者を含めてオープンに議論できた意義は大きかった。

  7. 日米経済関係の展望
  8. 今後10〜15年間の日米関係を見る上では、日本の団塊の世代を中心とする過剰貯蓄に留意する必要がある。国内における貯蓄・投資の不均衡により、日本の対米貿易収支・経常収支は常に黒字になる可能性が強い。
    この不均衡を前提とすれば、日本は市場をよりオープンとし、米国からの直接投資を呼び込む必要がある。例えば、土地の取得等の面で、米国企業が日本市場に進出しやすいよう国内制度を整備しなくてはならない。
    また、官民が共同で、日米問題を継続的に考える、政策コミュニティを形成することが重要である。


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