経団連くりっぷ No.142 (2001年2月22日)

なびげーたー

経済構造改革のための規制改革

常務理事 立花 宏


規制改革はカネの要らない景気対策として重宝された時期があったが、今こそ経済構造改革の推進という本来の役割を果たすことが求められている。

  1. 1993年9月の細川内閣による緊急経済対策から本格化した規制改革への取組みも、既に7年半を経過した。この間、1995年の規制緩和推進3か年計画、1998年からは新3か年計画の策定と毎年の改定を繰り返し、継続的に規制改革プログラムが実行されてきた。
    改革を後押しするために、1994年12月には行政改革委員会、さらに1998年2月からは規制緩和委員会(1999年に規制改革委員会と改称)が引き継いで、内閣の規制改革への取組みを督励してきた。昨年12月に策定された行革大綱によれば、新たな計画に基づいてさらに規制改革は推進されていくことになる。
    こうした努力によって規制改革はかなりの進展を見せ、加速がついてきたと評価できよう。もとより、規制改革の課題は時代の変化によって次々に生まれてくるものであり、これで終わりということはない。しかし、数年前に山積していた課題はかなり目途がつきつつあることも事実であろう。

  2. これまでの改革を振り返ってみると、通信、金融、流通、電力、航空などの分野では実態経済面でかなり大きな変革が進む一方、通信ではIT革命に対応して更なる改革が求められている。他方、教育や医療・福祉、雇用・労働あるいは農業などのように、これまで取組みが遅れた分野でも改革の動きは始まってきた。
    残された課題の中には、日本の政治経済社会の根幹に触れる問題も多く、また、社会保障や税制、中小企業政策などの制度と絡み合ったものも多い。今年度末で規制改革の取組みに新たな区切りを迎える現在、今後の推進体制、検討方針についても新たな工夫が必要となっている。

  3. 1999年4月にOECDは日本の規制改革に関する報告書を発表したが、その中で、これまでの個別的な規制緩和アプローチは非効率で戦略性に欠けると指摘し、経済全体を網羅した包括的な規制改革プログラムが必要であると述べている。まさに、これからの日本の経済・社会のありかたを展望した上で、その達成する手段としての規制改革というグランドデザインが求められている。今日、経済政策の基本も、民間経済の落ち込みを大量の財政資金投入で支えることから、民間の自律的成長を促す政策に転換する必要がある。
    かつて、規制改革は財政資金を要しない景気対策として重宝された時期もあったが、いまや経済構造改革の推進という本来の役割、すなわち今後の成長分野に経営資源を移していくことによって経済の官依存体質を改めていくことを果たす段階になってきた。


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