経団連くりっぷ No.142 (2001年2月22日)

経団連意見書/2月20日

「21世紀の日中関係を考える」を建議


わが国と中国とは長い交流の歴史を有している。特に経済面では、中国の改革・開放以降交流が飛躍的に発展し、今や両国は経済的に高度の補完関係にある。中国が目覚しい経済発展を遂げ、国際的なプレゼンスを高めている中で、良好な日中関係は日中経済交流の発展ばかりでなくアジアの安定と繁栄のためにも重要となっている。
そこで経団連では、21世紀に両国間の相互理解をさらに深め、日中経済交流を一層発展させるべく、標記意見書をとりまとめ、2月20日の理事会で承認の後、日中両国政府ならびに関係方面に建議した。以下はその概要である。


「21世紀の日中関係を考える」
−日中の相互信頼の確立と経済交流拡大のための提言−

I.中国をどうとらえるか
  1. 中国の目覚しい経済発展と課題

    • 改革開放路線以降、年平均GDP成長率は9.8%を記録。
    • しかし、一人当たりGDPでは低位中所得国になったに過ぎず、沿海部と内陸部の経済格差や汚職・腐敗の蔓延なども顕在化。

  2. 国際関係における中国

    • アジアの安定と発展を目指す地域協力の枠組みに中国は不可欠。(経済面のみならず、軍事面、環境保全面などの観点からも)
    • WTO加盟を機に、世界と共に歩む責任と自覚のある国家へ。

  3. 日本人の対中国観、中国人の対日本観

    • 天安門事件(1989年)以降、両国関係を良好と考える日本人が減少傾向。
    • 中国人の日本人観もマイナスイメージが多い。


II.これまでの日中関係
  1. 20世紀の日中関係をふりかえって

    • 戦前・戦中の両国関係:「村山談話」の認識に基づき、自らの歴史を真摯に問いただし、相互理解に向けて粘り強い対話が必要。
    • 戦後の両国関係:両国の関係者の熱意と努力が、国交正常化と日中平和友好条約に結実。

  2. 日中関係の現状

    • 日本は8年連続で中国の最大の貿易相手国。(中国は日本の第2位の貿易相手国。)
    • 日本の対中ODAは総額145億ドル。中国を訪問する日本人は100万人超に。

  3. 変化が見られる日中経済関係

    • かつて日本型産業政策を手本。今や、中国における日本の経済的・技術的プレゼンスが、欧米と比較して相対的に低下傾向。

III.相互信頼の確立と経済交流拡大のために
1.相互信頼の確立
歴史認識日中歴史教科書対話 台湾問題への対応人的交流の促進
過去の誤った国策と行為を反省するとの「村山談話」が基本であり、歴史認識の問題で互いの感情を傷つけることがないよう慎重に対応すべき お互いの歴史教育や歴史教科書の記述に違いが存在
  • 共同研究等を通じ、互いに事実関係を共有することが肝要
  • 日中の歴史専門家同士による「教科書対話」のための環境整備に取り組むことが必要
「日中共同声明」「日中平和友好条約」に示されている認識を尊重し、話し合いを通じて平和的な解決が行われることを期待 首脳レベルの相互訪問が定期化し、民間交流も活発化
  • 若手の人材育成、民間有識者による知的交流など多層的な対話と交流を拡大
2.経済交流の一層の拡大に向けて
経済交流の理念と規範
  • 相互理解、相互信頼、平等互恵、
    長期的視野、地球的視野がベース
  • 良き企業市民となるべく努力
日中経済交流における問題点と提言
貿易・投資金融 インフラ整備と西部大開発IT革命への対応
  1. 外資企業への内国民待遇の保証
  2. 制度・法令などの改廃における透明性確保
  3. 知的財産権保護に関する審査・監督の徹底
  4. 売上債権回収の迅速化
  5. 物流の効率化
  1. 不良債権問題の早期解決と国際的金融慣行の遵守
  2. 日系保険会社に対する営業認可
  3. 資本市場の育成
ハード・ソフト面の投資環境整備、沿海部と内陸部を結ぶ通信・物流・エネルギーなどのインフラ整備が重要。西部大開発に対しては、長期的なスタンスで協力の方策を検討すべき 国際的に整合性が必要とされる問題への対応
  • 知的財産権、個人情報の保護、ハイテク犯罪への対応、電子商取引のルール整備など
  • 中国人IT技術者に対するビザの優先的発給
エネルギー・環境問題への対応対中環境植林 対中ODAのあり方日中経済交流関連会議のあり方
省エネルギーや環境対策を取り入れた技術の導入が必須
  • トータル・エンジニアリング能力を有する企業の育成、ISO14001取得の推進など
長江上中流域などでの土壌流失や内陸部での砂漠化が深刻化
  • クリーン開発メカニズムを視野に入れた対中環境植林協力の推進
累計145億ドルの対中ODAは、中国のインフラ建設に貢献
今後は、民間資金で対応できない分野(生態環境保護や教育、人材育成支援など)に絞り、ODAの有効性を高めるべき
両国企業間の専門家レベルの交流拡大が重要。既存団体の体制見直し、研究者・研究機関の組織化も重要
多国間枠組みの中での日中関係
中国のWTO加盟
中国の国内の法制度やビジネス慣行がグローバル・スタンダード化
〜21世紀の日中関係 〜
日中関係を二国間のみならず、アジア・世界などより幅広い地域の中でどうあるべきかを考え、協力してアジアの声を代弁する時代に
アジアや世界における地域の安定と発展に貢献
地域経済協力の枠組みの深化
東アジアの地域協力における日本のリーダーシップ

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