経団連くりっぷ No.142 (2001年2月22日)

第37回四国地方経済懇談会/1月30日

経済新生と新四国創造


経団連・四国経済連合会(四経連)共催の標記懇談会が徳島市において開催された。地元経済人約110名の参加のもと、経団連側は今井会長、辻・片田・香西・上島の各副会長が出席し、四経連首脳と最近の経済動向、地域産業の活性化、社会基盤整備等について意見交換を行った。また、懇談会に先立って四国化工機株式会社を訪問し、液体食品等を充填包装する最新機器等を視察した。

  1. 四経連側発言要旨
    1. 開会挨拶
      近藤耕三 会長(四国電力会長)
    2. 四国の景気の現状は、生産面を中心に緩やかな改善の動きが続いているが、個人消費は低調で、景況感もやや後退している。
      四国は少子高齢化が進み、1990年以来、人口が減少している。若者の定着を図るため、四国内に産業を育成し雇用を創出するなど、環境づくりに注力する必要がある。
      一方、本四3架橋の完成に続き、4県都を結ぶXハイウェイの開通等、新しい発展基盤が整いつつあり、四国がこうした新たなインフラを最大限に活用し、活力ある地域を創造することが肝要である。
      今後、四国が自立的発展を図るためには、

      1. 四国4県や産学官の垣根を越えた連携、
      2. 四国独自の歴史文化や技術を生かした個性の発揮、
      3. 新しい四国づくりを支える基盤整備の推進、
      が重要である。

    3. 四国経済の現状と課題
      住友俊一 副会長(阿波銀行会長)
    4. 四国経済は、生産活動については全体として緩やかな上昇傾向が続いているが、個人消費は低調の域を脱しておらず、地元百貨店の経営破綻が地域経済に影響を与えている。また、経営者の景況感も悪化しており、景気に不透明感が出ている。
      四国発展のための課題として、

      1. 本四3架橋と四国内の高速道路をつなぐ道路など、基盤整備の効果を広く地域に波及させるネットワーク化の推進、
      2. 既存産業の高度化や新産業の創出、
      が挙げられる。
      本四3架橋の開通により、関西圏などとの競争も激化している反面、新たなビジネスチャンスが広がっている。徳島県から全国に展開した企業として、四国化工機や大塚製薬等もあり、今後、新しいことに挑戦する気概を持つ企業が四国から生まれるような環境をつくることが重要である。

    5. 地域産業の活性化に向けた取組み
      三木俊治 副会長(阿波製紙会長)
    6. 国際・地域間競争が激化する中、四国には四国化工機をはじめ、独自の技術で世界一、日本一のシェアを誇る企業が多数存在する。さらに、理工系大学や公的研究施設の整備が進んでおり、大学と民間が共同でベンチャー企業を立ち上げる例も増えている。今後とも、産学官連携のもと、競争力ある独創的な新産業を創出し、強靭ネ産業構造を構築する必要がある。
      地域産業活性化に向けた地域の取組み事例として、

      1. 徳島大学をはじめ5大学が共同で設立した四国TLO、
      2. 高知工科大学など大学教授と民間の連携によるベンチャー企業の創設、
      3. ワープロソフト「一太郎」を開発したジャストシステム、
      等、旺盛なベンチャー精神がある。四経連としては、産学官の連携を密にし、既存産業の高度化と新産業創出に向けて取り組んでいく。

    7. 地方における行政改革の推進
      赤澤庄三 副会長(帝國製薬社長)
    8. 行政改革については、中央省庁と同時に地方自治体の改革を強力に進める上から、行政運営の効率化、行政評価制度の確立、企画・立案機能の強化などに早急に取り組む必要がある。行政運営の効率化においては、市町村合併による抜本的な組織のスリム化が重要な課題である。四国では、香川県大川郡をはじめ合併への取組みが活発化しているほか、Xハイウェイ開通により県レベルの交流・連携の機運が高まっており、広域行政の実現に向けた契機となろう。
      また、真の地方分権の実現には、地方への権限と財源の移管が不可欠であり、地方分権に相応しい財源システムを早急に構築すべきである。

    9. 21世紀の社会基盤整備の方向
      立田敬二 副会長(立田回漕店会長)
    10. 完成から2年近くが経った今日、本四3架橋は観光、生活、産業等多様な分野にわたり大きな効果をもたらしている。本州四国連絡橋公団によると、2000年度のGDPへの波及効果は、関連8府県で約9,000億円に上る。本四公団の赤字ばかりが問題視され、3架橋がもたらす効果が看過されている。また、地元自治体の資金負担の実態についてもほとんど知られていない。
      社会基盤整備に当たって最も重要な点は、長期的視点に立った整備である。経済活動の基本となるインフラ整備は、国際競争力強化という観点からも必要である。

    11. 歴史・文化など地域の特色を活かした地域づくり
      水木儀三 副会長(伊予銀行会長)
    12. 四国には、夕日に輝く美しい瀬戸内海をはじめ、訪れる人の気持ちを癒す貴重な自然、歴史・文化がある。四国の人口が減少の一途を辿っている今日、定住人口減を交流人口増によってカバーする必要がある。
      四国が有する歴史・文化、自然を活かすため、各地の名所を巧みに結びつけ、案内標識の整備等を進めるとともに、語り部の充実等に取り組んでいきたい。また、精神的豊かさが重視される21世紀には、セーフティネットの観点からも「癒し」が得られる地域づくりが求められる。このため、霊場八十八カ所等を訪れる人々を温かくもてなすことが重要である。
      四国は「身は一つにして西は四つ」と、古くから言われるように多様な地域づくりが行われてきた。今後、地域に対する愛着と誇りを高めるような多様な地域づくりが一層求められよう。

  2. 経団連側発言要旨
  3. 片田副会長より証券市場の活性化、上島副会長よりアジア諸国との経済交流について、また、辻副会長より環境問題への対応、香西副会長より観光振興を通じた四国の活性化について説明があった。
    最後に今井会長より、四国におけるさまざまな取組みを踏まえつつ、経団連として経済新生に向け積極的に取り組んでいくとの総括を以って結びとした。


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