第123回関西会員懇談会/1月31日
「21世紀の日本−経済社会の変革と新たな創造に向けて−」をテーマに、標記懇談会が大阪において開催された。当日は今井会長、辻・岸・片田・森下・香西・上島の各副会長が出席し、関西地区における経団連会員約200名の参加の下、意見交換が行われた。また、懇談会に先立ち、3月末にオープン予定のユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)を訪問し、ハリウッド映画をモチーフとしたテーマパーク等の諸施設を視察した。
日本版ビッグバンに伴う取引所集中義務の撤廃、証券業の登録制への移行、手数料自由化等の実施により、わが国証券市場を取り巻く環境は大きく変化し、IT技術の急速な発展はネット証券など新たな取引手法を生み出すとともに、証券取引のグローバル化を一気に加速させた。大証では、こうしたグローバルな市場間競争に備え、諸施策を講じている。
デリバティブ市場については、米ナスダックおよびダウ・ジョーンズ社との間で、それぞれデリバティブ商品および同指数連動型上場投資信託の上場について基本合意を締結した。また、現物市場については、ベンチャー企業等への資金調達を目途に、昨年6月、ナスダック・ジャパン市場の取引を開始した。本年は、海外接続・24時間取引を完成させ、外国株式市場の創設等、市場育成に努めたい。市場の整備にあたっては、金融資産からの所得を総合的に取り扱う税制への移行を検討する必要がある。
税制改正においては民間に資金を回すことを基本とすべきである。その資金を効率的に活用する民間フ取組みと、規制緩和等による行政側の支援体制とが相まって、経済活性化が可能となる。また、消費回復に当たっては、国民が将来不安を払拭し、明るい展望を持てる将来ビジョンを示すとともに、ビジョンに伴う痛みを国民の間で共有することが重要である。
経済活性化の重要ポイントであるITについては、ネット接続料金の引下げや最新の通信技術の導入等、競争原理に基づき便利で安価な利用環境の整備が重要であり、思い切った規制緩和が不可欠である。
また、都心を活性化させるためには「都心居住」をキーワードとして、都市機能を再生・高度化させるためのグランドデザインが必要である。多様な施設が集積している御堂筋は、地域住民・企業・行政など官民一体となった都市再生への取組みの先進事例となりえる。御堂筋活性化を契機として、大阪地区をはじめとする関西経済が元気な姿を取り戻せるよう尽力したい。
わが国ならびに関西の経済を成長軌道に乗せるためには、空港や港湾など基礎的なインフラ整備を国家的な課題と位置付け、取り組んでいくことが重要である。
関西には事業や技術を創造するDNAが備わっており、産学共同作業やTLOの活用により、バイオやIT分野の人材育成に取り組む必要がある。
また、成長軌道に乗せる上でボトルネックになっている環境問題については、循環型社会構築という観点から、成長と環境との調和を図らなければならない。具体的に、わが社ではソーラーエネルギー住宅を5千棟供給しているが、主婦層を中心に省エネや環境問題に対する意識は確実に向上しており、今後、こうした市民意識を全体として一層高めていくことが必要である。
グローバル化に伴い、シンガポールや香港、上海等の都市間で、ITインフラ、都市交通、住宅等を含む厳しい競争が顕在化している。こうした中、人々が住むことに魅力を感じるような都市環境を整備することが必要である。
先般、故小渕前首相のもと設置された都市再生推進懇談会においては、経済再生に向けての都市の重要性が再確認され、
秋山喜久氏(関西電力会長/関西経済連合会会長)より「生産性向上のためのイノベーションに当たっては、政府研究機関のシーズを民間に移転することが重要である」との発言があった。また、大庭浩氏(川崎重工業相談役名誉会長)より「震災から6年が経過した神戸では、インフラの復旧が急ピッチで進み、街並みも整いつつあるが、現在は産業・経済復興の正念場」として、新産業の創造・誘致に向けた地元産学官一体の取組みについて報告があった。
片田副会長より「証券市場の活性化」、森下副会長より「平成13年度税制改正」について発言がなされた。また、岸副会長が「IT革命推進のための環境整備」、上島副会長より「アジア諸国との経済交流」について説明した後、辻副会長が「環境問題への対応」について発言した。さらに、香西副会長が「世界に向けて発信する関西」について関西側の取組みを分析・評価した。
最後に今井会長より、関西におけるさまざまな取組みを踏まえつつ、経団連として構造改革等に積極的に取り組んでいくとの総括を以って結びとした。