経団連くりっぷ No.142 (2001年2月22日)

日タイ貿易経済委員会(委員長 安居祥策氏)/2月2日

タイ経済の現状とタクシン新政権の経済政策

−サクティップ駐日タイ大使と懇談


タイでは1月6日に実施された下院選挙を受けてタクシン新政権が誕生した。日タイ貿易経済委員会では、新政権誕生に先立つ2月2日、サクティップ・クライラーク駐日タイ大使を招き、今後のタイの政局と経済政策について懇談した。

○ サクティップ大使講演要旨

  1. 1月6日に実施された下院選挙で、タクシン氏率いるタイ愛国党は地すべり的な勝利を得た。今月中に、チャワリット元首相の新希望党と、バンハーン元首相のタイ国民党との連立で新政権が誕生する見込みである。

  2. タクシン氏は過去における資産隠蔽疑惑で憲法裁判所の裁定待ちの状況にある。ただ、タクシン氏自身はこれに関して全く懸念を表明しておらず、タクシン氏が有罪となって首相を辞めても、タイ愛国党が引き続き政権を担当することには変わりがないと見られている。

  3. 今回の選挙では、古い世代の議員に替わり新たな顔ぶれが多く登場した。選挙期間中は実質的な政策論争が行われ、投票率は70%を超えた。タクシン氏の経済政策については、公約以外まだ明らかでなく、実施してみなければわからないが、新政権には、公約を実現するための機会と時間的猶予が与えられるべきであろう。

  4. 日本は、新政権にとっても、これまで以上に重要な友人である。タクシン氏は赤尾在タイ大使に対し、一層日本を重視する旨述べたとのことである。今井経団連会長が4月にタイを訪問されるのは時宜を得たものと考えるが、それ以前にタクシン氏が日本を訪問する可能性もある。

  5. 2000年のタイ経済は、原油価格の高騰にもかかわらず4.5〜5%のGDP成長率を達成した。輸出と外国からの投資、観光が経済成長に寄与した。また、2001年の経済成長率は3.8%と見込まれる。インフレ率は0〜3.5%という低水準を見込んでおり、金利も低水準で、貿易収支は黒字を継続するだろう。不良債権比率は、2000年末の時点で21%まで低下した。

  6. タイ愛国党は、経済を刺激するため、経済関連のいくつかの法律を改正する旨表明している。一部で、同党が外資のタイ進出に反対していると報道されているが、決してそうではないと思う。タクシン氏はタイ国民の意思を尊重し、彼らにもチャンスを与えながら、外国からの投資拡大にも注力するだろう。他にも、VAT引上げの延期や中小企業振興のための多くの政策、さらに不良債権処理のため国立の資産管理会社設立などが提案されている。そのための財源は、大型プロジェクトの変更や延期等により確保するとされている。


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