経団連くりっぷ No.142 (2001年2月22日)

駐アジア・大洋州地域大使との懇談会(司会 内田事務総長)/1月25日

アジア・大洋州各国の最新の情勢


経団連は日本商工会議所とともに、アジア・大洋州地域8ヵ国の大使を招いて懇談会を開催し、外務省アジア大洋州局 槇田邦彦局長より1月24日から26日まで外務省で開催されたアジア・大洋州地域大使会議の概要について、引き続き、韓国、中国、インドネシア、インド等の政治経済情勢についてそれぞれの大使より説明をきいた。また、当日は、今井会長が開会挨拶、佐々木日商特別顧問が閉会挨拶を行った。

○ 各国大使説明要旨

  1. 韓国情勢(寺田大使)
  2. 昨年6月、歴史的な南北首脳会談が実現した後はしばらく南北統一間近との雰囲気に満ちていたが、秋口から国民の関心は経済に移っている。大財閥グループの破綻、米国経済の先行き不透明感など内外の要因により経済が不安定化した。金大統領も経済改革が不十分だったと認め、改革を徹底的に推進していく旨表明している。今年の景気は、第2四半期までは低迷するが、夏ごろから上向くと思われる。
    日韓関係については、日韓投資協定交渉が最終段階にあり、速やかに締結できるように努力している。また、自由貿易協定(FTA)については、両国首脳によりFTA推進が合意されているが、モメンタムを失わないよう必要な措置を講じていく必要がある。

  3. 中国情勢(谷野大使)
  4. 中国は、改革・開放により大きく変わった反面、「変わらざる中国」もある。すなわち、改革・開放は経済面であり、政治面では改革は行われていない。また、腐敗や貧富の差の拡大、大規模な環境破壊など改革・開放による影の部分が顕著に表れてきている。
    今年は2002年に行われるはずの政権交代に向けた準備の年である。政権交代が予定通り行われれば、建国以来初めてのこととなり、江沢民主席にとって大きな功績として残る。10月にはAPECが上海で開催され、江沢民主席がホストを務める。WTO加盟は夏までに実現するだろう。
    対中ODAの削減については、日本の財政が危機的状況にあることから、中国側も一応の理解を示している。

  5. インドネシア情勢(川上大使)
  6. インドネシアは、スハルト時代の不正追及問題、地方分離独立運動、国会と大統領との確執など重大な問題を抱え、これが経済にも大きな影響を与えている。ワヒッド大統領の標榜する改革路線は正しい方向にあるとの認識から、日本政府は改革努力を支援する立場をとっている。
    経済面では、IMFの管理下で短期的なマクロ経済の安定基盤はできたが、本格的回復には至っていない。しかし、家電・繊維等の輸出と個人消費が牽引役となり、実体経済も回復し始めている。ただし、民間債務問題は解決には至っておらず、依然として大きな課題である。大規模プロジェクトの問題は各社毎の解決が難しく、政府間での解決も必要だと考える。

  7. タイ情勢(赤尾大使)
  8. タイ経済は、IMFの監督下から脱し、各種の経済法制の改正が実施されたことなどから国際的信用が回復し、今後の経済回復のベースができあがった。他方、不良債権問題は根強く残っており、原油価格の上昇、農産物価格の下落など懸念材料も抱えている。
    こうした中で、総選挙が行われ、タクシン氏が首相となる見込みであるが、今後の経済運営については不確定要素が多い。同氏は、農民の債務棚上げなど、実施されれば大幅な財政赤字を招く公約を掲げている。逆に、実施できなければ国民が失望し、不満が噴出する可能性がある。

  9. シンガポール情勢(橋本大使)
  10. シンガポールはさまざまな国とFTAを締結しているが、日本とシンガポールとの間のFTAについては、現状追認型の協定とせず、双方が具体的な便益を受けられるような協定としたい。経済界からも引き続き要望があれば出してほしい。国民、第三国に対して誇れるような内容としたい。

  11. インド情勢(平林大使)
  12. 昨年8月の森総理の訪印によりパラダイム・シフトが起こり、両国間の関係は改善に向かっている。10月末の対インド政府派遣経済使節団は、経済面でこれを裏付けることとなった。
    現在、インドでは「第2世代の改革」が明確な政治意思に基づき行われ、規制緩和、経済法制の整備、外資奨励政策、国営企業の民営化などが進められている。IT、バイオテクノロジー、医療機器、各種製造業は有望な分野である。ただし、電力などのインフラについては政治的・社会的な制約が大きい。
    2002年には日印外交関係樹立50周年を迎え、ナラヤナン大統領の来日他、各種の記念行事が予定されている。

  13. パキスタン情勢(沼田大使)
  14. パキスタンに対して、ドイツやイギリスも援助を再開しており、ドナー国との関係は少しずつ改善している。日本からの経済措置も早期に解除したいと思っている。
    また、日本とパキスタンとのビジネスでの交流を進めていきたい。来月2月には、現地で日本・パキスタン・ビジネス・フォーラムが設置されるので、日本の経済界にもパキスタンに目を向け、投資機会を見つけてほしい。

  15. オーストラリア情勢(高橋大使)
  16. オーストラリアでは、昨年はオリンピック、本年は連邦制100周年を迎えて各種のイベントが行われている。好景気も7年以上続いている。年末には、ハワード首相が3選を目指し選挙が行われる予定であり、内向きの年になるだろう。ただ、アジアとの関係では、輸出の大半がアジア向けであり、アジア重視は変わらないと考えられる。


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