経団連くりっぷ No.143 (2001年3月8日)

なびげーたー

日本のIT革命は、今が正念場

産業本部長 林  正


  1. さる3月2日の高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(本部長:総理、通称IT戦略本部)第2回会合では、IT国家戦略「e-Japan戦略」のアクションプランともいうべき「重点計画案」が議論された。
    「e-Japan戦略」は、昨年、話題を呼んだ「IT戦略会議(議長:出井ソニー会長兼CEO)」の議論を元に決定されたもので、「5年以内に日本を世界最先端のIT国家」とすべく、「民間活力が最大限発揮される環境整備」を強く打ち出している。IT戦略本部では、3月末を目途に「重点計画」を決定することとしているが、これがどのような内容になるのかは、21世紀初頭の日本経済の繁栄を占うものといえよう。

  2. これまでにも、政府は数々のアクションプランを策定してきた。しかし、従来は、「役所がやりたいこと」や「役所のやりやすいこと」の羅列との印象を拭いきれるものではなかった。また、現状の問題点や課題を明らかにし、改善を図るようなフォローアップは、必ずしも十分には行われていなかった。このため、経団連では、さる2月20日、「『e-Japan戦略』実現に向けた提言」を発表し、

    1. 「重点計画」を、ITを利用する国民や産業界から見て、「やるべきこと」を早急に実施する計画とすべきこと、
    2. IT戦略本部が海外の取組み事例をベンチマークとして活用するなど、国民に分かりやすい形で評価・分析を行うべきこと、
    を求めた。

  3. 各国がITの活用に凌ぎを削る中、日本が米国等にキャッチアップし最先端のIT国家となるには、「重点計画」の初年度にどれだけの成果をあげることが鍵であり、2001年度内に、全ての国民にIT革命の推進を実感させ得る成果をあげることが必要だ。
    この観点から、経団連提言で早急に実現すべきとしているのは、まず、通信事業者間の競争促進などに向けて、事前規制を抜本的に見直すことだ。例えば現状では、通信事業者は、一種・二種に区分され、回線調達方法や新サービスの提供などが事前規制の対象となっている。この結果、事業者の機動的なサービス展開が阻害され、利用者ニーズが十分に充足されていない。主要国にも類を見ない規制が残ったままでは、日本のIT革命は加速しない。「重点計画」には、一種・二種区分の撤廃などを盛り込み、早期に改革を実現しなければならない。

  4. また、電子政府に関しては、ワンストップ・サービスを、早急に国民に利用可能とすることが重要だ。ワンストップ・サービスは、インターネットを経由した一回のデータ送信で、関連省庁全てに対する手続を完了させるものであり、「縦割り行政の常識」をITで覆すものだ。輸出入・港湾関連手続などのワンストップ化を早期に実現することによって、国民・企業は、電子政府が真に自分達のためのものであると実感できる。
    IT革命の加速に向けては、「e-Japan戦略」を実行に移すこれからが正念場だ。経団連では、ITを活用する国民や企業にとって、プライオリティの高い事項が早急に実現するよう、政府・与党に積極的に働きかけていく。


くりっぷ No.143 目次日本語のホームページ