経団連くりっぷ No.143 (2001年3月8日)

ヨーロッパ地域委員会(共同委員長 佐々木 元氏)/2月14日

ビジネスチャンスが拡大しているドイツ

−コッパー・ドイツ銀行監査役会会長よりきく


ドイツ連邦共和国対内投資促進コミッショナーとして訪日したヒルマー・コッパー・ドイツ銀行監査役会会長が経団連を訪問し、佐々木ヨーロッパ地域委員会共同委員長と懇談した。この懇談の中で同氏は、ドイツでは現在さまざまな規制改革や税制改革が行われており、ビジネス環境が急速に改善している旨強調し、日本からの投資の拡大への期待を表明した。

○ コッパー会長説明要旨

  1. ドイツにおける環境変化
  2. ドイツ経済は現在、活気に満ちており、日本産業界にとっても魅力的な投資先となりつつある。かつては東西ドイツ統合に伴い、低成長の時期もあったが、現在、成長率は3%以上となっており、喜ばしい限りである。2001年はこの成長率が若干下落するものの、2.8%程度と予想されている。
    ドイツでは2年前に発足した新政権の下で、規制緩和が推進されている。特に通信やエネルギーの分野で価格が下落し、競争が激化している。それに加えて今回、新たな税制改革が発表された。この税制改革の中でも特に、法人税率は37〜8%に引き下げられたが、これは画期的なことである。また2002年からは、株式の売却に伴うキャピタルゲイン課税が撤廃される。これにより銀行はじめ企業が保有している多くの株式が売却され、売却された株式を外国企業が購入することで、ドイツ国内への外資参入が可能になる。外資の流入は、政府のみならずドイツ国民や労働組合も歓迎している。
    また所得税については段階的に税率が引き下げられる。これはドイツ経済には好影響となる。その効果は2つある。まず所得税率が引き下げられると購買力が高まる。
    また税率が引き下げられると同時に課税対象ベースが広がり、結果として税金逃れというケースが少なくなる。それにより透明性の向上につながる。税制システムの透明性を向上させ、簡素化を図ることは大変好ましいことである。

  3. 魅力的なユーロ市場
  4. 2年前に導入されたユーロは、まだバーチャル(仮想)の状態であり、実際にユーロ紙幣が市場に出回るのは来年1月である。ユーロにより市場は拡大し、将来性も高まった。また為替リスクがなくなったことの意義も大きい。一時ユーロが過小評価されていたが、その間、輸出増や雇用創出などドイツ経済は良い影響も受けた。現在ユーロは安定しており、インフレ率も1.7%と極めて低い。

  5. EU拡大におけるドイツの役割
  6. 歴史的、文化的にみてドイツは中・東欧へのゲートウェイであり、最大のパートナーである。これは今後も不変である。中・東欧のEU加盟はおそらく5〜8年くらいかかると考えられるが、これらの国々は、加盟により現在の約2倍の成長率となると予想される。この流れの中で、ドイツはますます重要な役割を持つことになる。


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