経団連くりっぷ No.143 (2001年3月8日)

ヨーロッパ地域委員会(共同委員長 佐々木 元氏)/2月16日

失敗が許されない11月のWTO閣僚会議

−ラミー欧州委員会委員


ヨーロッパ地域委員会では、訪日中の欧州委員会のパスカル・ラミー委員(通商問題担当)を迎え、今井会長、佐々木ヨーロッパ地域委員会共同委員長らとの懇談会を実施した。懇談では、WTO新ラウンドに向けた最大の課題は途上国への対応であり、この課題について日・EUが連携し、これまで以上に積極的に取り組んでいくことが重要との認識で一致した。またラミー委員は、日・EUの経済関係強化のために、経済界から政府に向けた積極的な提言を期待している旨強調した。

○ ラミー委員説明要旨

WTO新ラウンドについては、必要最低限の途上国からの参加が求められる。そのために、途上国を3つのグループに分けて対応する必要がある。

第1は、国内の改革議題が前向きに進んでいる国々、第2は後発の開発途上国、そして第3がその他の途上国グループである。特に第3のグループへの対応方法として次の2つがある。

まずは「実施」の問題である。このためには何らかの“頭金”(交渉の前段階で途上国側が欲するものを与えること)が必要となるが、交渉への意欲が削がれるほど頭金を多くすべきではない。

2つめは交渉のアジェンダの問題である。これらの国に直接関わる懸念に対応するアジェンダでなければならず、アンチダンピング、投資、競争、市場アクセス、環境などに対するEUの立場を開発促進型とすることが必要である。

これらの国々に対して日本は、アジアを中心に活発に進めているが、マレーシアやシンガポール、タイ、フィリピンなどに対しては、今後一層の努力が必要である。

また後発途上国に対する市場アクセス円滑化の整備が求められるが、農業の分野でこれらがさらに進展すれば正しい方向に進むと考えている。

「実施」の問題については、日欧が共同で作業を進め、途上国にとって魅力的なものにしていかなければいけない。

なお、日本が進めているFTA(自由貿易協定)について、現在のところ特段の問題は感じられないが、FTAを進める際に注意しなければいけないのは、途上国が取り残されないようにすることである。

また、地域的な貿易の取組みにおいて考慮すべきは米国の立場である。米国はFTAA(米州自由貿易圏)について高い優先順位をつけようとしているが、新政権の政策が固まるまでに、WTOの場でのマルチのルールが必要であるといった強いシグナルを日・EUが送るべきである。

また、日欧のビジネス協力については、欧州と日本の経済界が政府に共通のプレッシャーを与え、更なる関係強化のために、経済界から意義深い提言をいただくことが必要である。


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