日本メキシコ経済委員会(委員長 川本信彦氏)/2月15日
1月23〜24日、平沼赳夫経済産業大臣に同行してメキシコを訪問した佐野忠克 経済産業省通商政策局長より、同大臣とデルベス経済大臣、ソホ大統領補佐官との会談の成果について報告をきいた。佐野局長によれば、一連の会談で、本年6月を目途にフォックス大統領の来日を調整すること、それまでに交渉中の日墨投資保護・促進協定を妥結すること、また日墨自由貿易協定の交渉開始に向けた研究会の発足につき検討を進めることが合意された。
平沼大臣は、まずフォックス大統領の側近中の側近であるソホ補佐官と会談した。大統領が就任前から希望している訪日については、6月を目途に調整することで合意した。
デルベス経済大臣は、世界銀行や米州開発銀行に勤務した経験を持つテクノクラートで、会談の合理的な進め方が印象的であった。前政権時代から交渉が続いている日墨投資保護・促進協定に関して、フォックス大統領の訪日までに妥結することで合意した。
日墨自由貿易協定は、今回の大臣訪墨の最大イシューであり、事前に産業界の意見をきき、政府部内でもある程度地ならしをしたうえで会談に臨んだ。デルベス大臣は、前政権からの日本との自由貿易協定締結は、新政権になっても変わらないと述べ、正式に交渉をオファーしてきた。これに対し平沼大臣は、両国間で自由貿易協定に関する研究会の発足につき検討することを提案した。
平沼大臣は帰国後、訪墨の結果を閣議報告するとともに、森総理大臣の了承を得て、大統領訪日を目途に、研究会発足の準備を進めている。
研究会の発足について、政府部内で完全に合意が得られているわけではない。農林水産省は、世界貿易機関(WTO)における自由化交渉の成果を二国間交渉で先取りすることは避けたいとして、農業問題の除外を求めている。
農業問題は、関税や価格以外に考えるべき要素が多い。たとえば、野菜のセーフガード一つをとっても、地域によって異なる生産時期を考慮しながら、どの時期にセーフガードを発動すべきか、微妙な調整が必要になる。工業製品の自由化とは異なる部分もあるので、研究会で仔細に検討する必要があろう。
ウルグアイ・ラウンド以降、市場アクセスのほかに、投資、政府調達、知的所有権など広範な分野で、ルールの必要性が議論されるようになった。今やこうしたルールなしに国際的な企業の活動はあり得ない。市場アクセス問題がデッドロックになるからといって自由貿易協定交渉を拒否するのではなく、できることからルールづくりを進めていくことが重要ではないか。