経団連くりっぷ No.143 (2001年3月8日)

ハリーリ レバノン首相と藤澤 中東・北アフリカ地域委員長との懇談/2月6日

日本からの投資は小規模でも歓迎する


来日したレバノン共和国のハリーリ首相は、藤澤 中東・北アフリカ地域委員長と懇談し、中東和平をはじめとする最近の中近東地域情勢や、同国の経済復興へ向けた取組みについて説明した。内戦終結後の同国は、国の復興、経済の再生を積極的に推進しており、友好国である日本からの投資を強く望んでいる旨強調した。

○ ハリーリ首相発言要旨

  1. 最近の中近東情勢
  2. 中近東地域は、パレスチナとイスラエルとの紛争が、大々的な戦闘に発展する可能性があり、右派(リクード)のシャロン氏が優勢を伝えられるイスラエル首相選挙に重大な関心を抱いている。PLOをはじめ、レバノン、シリア、ヨルダン等のアラブ側は、戦争を望んでいない。戦争によって、中近東地域産油国からの原油輸出が滞れば、日本をはじめとする先進国経済に深刻な影響を与える可能性がある。
    その他のアラブ地域は安定している。例えば、国家元首の交替があったヨルダン、シリア、バハレーンは、産業の近代化と市場開放の政策をとりつつある。サウジアラビア、クウェイト、オマーン、チュニジア、アルジェリア等は、原油価格の高値安定によって財政状況が好転しており、政治的にも大きな混乱はない。

  3. レバノンの復興・発展
  4. レバノンをかつてのように中東における観光、金融、貿易等の中心地とすることによって、国の復興、発展をはかりたい。現在、EUとのパートナーシップ協定締結に向けて集中討議を行っており、まもなく調印する運びである。この協定により、双方は、製品をお互いの市場で自由に販売することができるが、EUは多種にわたるレバノン市場向け製品を擁する一方で、レバノンはEU市場向け製品が限られており、こうした製品を生産する産業を創出する必要がある。レバノンを産業地域として発展させるために、外国から労働集約型の高付加価値産業を誘致し、育成したい。
    最近制定した新投資法によって、投資関連の許可、承認事項を取り扱う機関を首相直轄の組織へ一元化した。また、税制について、レバノンの関税は15%であり、所得税は10%、社会保障費は16%未満と低い。
    IT産業の育成にも熱心に取り組んでいる。産業を問わず、外国企業が進出する場合は、土地等の操業に必要なものは提供できる。

  5. 対日関係
  6. 1976年の内戦勃発前のレバノンは、中近東の金融センターとして繁栄し、およそ1,500人の日本人が居住していた。レバノンに良い印象を持つ日本人ビジネスマンも多いときいており、友好国である日本企業の進出に大いに期待している。レバノンは、日本企業に対して巨額の投資を望んでいるわけではなく、第一歩として数百万ドル規模の投資を是非実現してほしい。


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