経団連くりっぷ No.143 (2001年3月8日)

OECD諮問委員会(委員長 生田正治氏)/2月16日

OECDで高まる日本経済の回復への期待

−西村大使よりきく


欧州大使会議に出席するため、一時帰国中の西村六善OECD日本政府代表部大使を招いて、最近のOECDの活動状況と今後の重要課題について説明をきくとともに懇談した。西村大使は、OECDが行っている各国経済の見通しに関連して、米国経済の減速に伴い、日本経済の早期回復が求められていると述べた。

○ 西村大使説明要旨

  1. 米国経済の急減速とニュー・エコノミー
  2. OECDの最大の課題は、マクロ経済政策の協調である。この面で、現在の最大の懸念材料は米国経済の急減速である。今年後半には回復するとの意見が多いが、設備投資の冷え込みによる景気後退、膨大な米国の経常赤字に端を発するドル安等の懸念もある。
    米国に、情報通信技術の発達による生産性の向上というニュー・エコノミーをもたらした条件として、

    1. 規制緩和、
    2. 労働の質と柔軟性、
    3. 資本コストの低さ、
    4. 企業・産業組織の再編の柔軟性、
    等があげられる。他方、競争の激化による企業収益の減少や、将来の市場予測に基づく先行的な解雇といったマイナス面も現われてきている。

  3. 日本経済への期待
  4. 米国経済の減速に伴い、世界経済の牽引役として、日欧経済への期待が高まっている。特に、日本経済については、昨年11月に公表されたOECDの報告書では、構造改革の推進、来年以降の着実な財政再建への移行等が求められている。
    最近のOECDにおける議論では、長年にわたり日本経済が復活すると言われ続けたにもかかわらず、実際にはあまり変化がないことへの苛立ちすら感じられる。

  5. グローバライゼーションとガバナンス
  6. OECDは、経済のグローバル化に伴って生じているさまざまな課題にも積極的に取り組んでいる。
    特に最近では、

    1. 国境を越える企業・消費者間の電子商取引に対する消費税課税の方法に関する報告書の公表、
    2. OECD域内の税競争の除去および有害な税制を採用しているタックス・ヘイブン(租税回避地)国・地域名の公表とその除去を目指した協議、
    3. 遺伝子組換え食品の安全性に関する科学的な分析、
    4. 環境税の導入や開発途上国への援助により、環境と調和した経済成長の達成を目指す「持続可能な開発」に関する報告書の作成、
    等の活動を行っている。
    最近、OECDで「良きパブリック・ガバナンス」という新たな概念が議論されている。つまり、政府は、企業との関係において、透明性、公正性、説明責任のある政策を伴う開放的なシステムを構築することが最終的により良い結果を生むと認識されてきた。同時に、市民社会との対話も重視されている。
    このような民主的プロセスをつくり上げていくうえで、基礎条件となるのがガバナンスという概念であり、政府のみならず企業も、今後避けて通れないグローバル・スタンダードとなっていくといえよう。


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