経団連くりっぷ No.143 (2001年3月8日)

OECD諮問委員会(委員長代行 塩谷憲司氏)/2月9日

OECDを中心に電子商取引をめぐる諸課題の解決を


パリに本部を置くBIAC(OECD産業諮問委員会)の情報・コンピュータ・通信政策委員会の石田喬也 副委員長(三菱電機開発本部技師長)より、本年1月16、17日の両日、アラブ首長国連邦のドバイ市において開催された、新興市場国における電子商取引に関するOECD会議の模様を含め、電子商取引をめぐる最近のOECDの取組みについて報告をきいた。

○ 石田副委員長報告要旨

  1. ドバイ会議の概要
  2. ドバイ会議は、「発展途上国における電子商取引の拡大」をテーマに開催された。特に、ドバイ、インド、香港等の政府代表よりインフラや教育の整備を含め、各国が進めている電子商取引への取組みが紹介された。他方、OECDのジョンストン事務総長は、先進国と途上国との間のデジタル・ディバイトの拡大傾向への懸念を表明した。
    この関係で、「人口あたりのインターネット・ホスト数でみると、電子商取引の普及が最も進んでいる北米地域と最も遅れているアフリカ地域との格差は、3年前より大きく拡大している。今後は、先進国による資金援助等により、途上国において電子商取引を一気に推進すべきである。」との報告書が、本会議に提出された。

  3. 電子商取引をめぐるOECDの活動
    1. インフラへのアクセス
      電子商取引の成長には、低コストの通信インフラおよび通信市場に対する競争環境の整備が必要である。そこで加盟国の、

      1. 通信市場の開放性、
      2. 通信事業規制機関の仕組み、
      3. 通信と放送の融合に関する規制、
      4. 回線接続料の設定、
      等に関する報告書を作成してきた。

    2. 信頼確保
      プライバシー保護に関しては、情報の収集方法や使用目的の公正性を求めた1980年のガイドラインを基本としつつ、各加盟国における実施を調和するための取組みが進んでいる。
      セキュリティに関しては、安全な電子商取引を可能とする電子認証の推進、技術の進歩に対応した、1997年の暗号ガイドラインおよび1992年の情報システム・セキュリティ・ガイドラインの2002年末までの見直しを目指している。
      消費者保護に関しては、透明かつ公正な保護水準や裁判外の紛争解決を求めたガイドラインが1999年末に採択されている。

    3. 課税
      1998年のオタワ会議において、課税に関する枠組みが合意された。その後、国境を越えた事業者対消費者のデジタル商品・サービスの取引において、消費税を徴収するための仕組みの検討が進んでいる。今後は、税当局間の国際協調に向けた取組みが必要となろう。


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