経団連くりっぷ No.143 (2001年3月8日)

電子商取引に係るOECD租税委員会報告書に関する懇談会(座長 島上清明氏)/2月14日

課税当局間の国際協力が重要

−OECD租税委員会、電子商取引課税に関する報告書を公表


世界レベルで急成長が続く電子商取引に係る諸課題に関して、OECDでは、非加盟国政府や民間とも協力をして検討を進めている。今般、OECD租税委員会が2年間の検討を経て電子商取引への課税問題に関する報告書をとりまとめたことを受け、同委員会のマクルーフ委員長と財務省の竹内審議官より、報告書の内容を中心に説明をきいた。

  1. 経緯
  2. OECD租税委員会では、1998年のオタワ閣僚級会合で確認された、電子商取引へも公平・中立・簡素の租税原則が適用されるとの枠組みを基本に、非加盟国や民間と協力して、テクニカル・アドバイザリー・グループ(TAG)を中心に実務的、専門的な検討を行ない、今般、報告書をとりまとめた。

  3. 国際的な直接課税
    1. サーバ等は恒久的施設(PE)となるか
    2. 所得課税に関しては、現行のPE概念がどのように適用されるかが問題となる。今回の報告書で明確化された概要は次の通りである。

      1. ウェブサイトはそれ自体ではPEとならない。
      2. ウェブサイトを掲載するだけではPEを有することにはならない。
      3. インターネット・サービス・プロバイダーはPEを構成する代理人とはならない。
      4. サーバーを所有又は貸借し、サーバーを通じて契約の締結、物品の引渡しなどの中核的機能が達成されている場合には、サーバーが置かれている場所が一定の状況下でPEとなりうる。

    3. 電子的に配信されるデジタル製品の所得分類
    4. また、典型的な電子商取引28類型をとり上げ、それぞれが租税条約上のどの所得分類が適用となるかを検討したTAGの検討を基に、所得分類の取扱いを明確化している。
      例えば、デジタル商品をオンラインによりダウンロードする取引の対価は、顧客が当該デジタル商品を自ら使用する場合には事業所得として分類され、著作権の商業的利用を目的とするような場合には使用料として分類される。

  4. 消費課税
  5. 報告書は、オタワ会合で確認された消費地課税原則をより明確に定義し、同原則を最良のかたちで実現しうる徴収の仕組みを検討する必要があるとしている。

    1. 消費地の定義
    2. クロスボーダーのサービス・無形財産取引に係る消費地の定義を、BtoB(事業者間)取引については消費側事業者の事業拠点、BtoC(事業者対消費者)取引については消費者の通常の居住地とするガイドライン案を提示している。【図1参照】

    3. 徴税メカニズム
    4. 徴収の仕組みに関しては、BtoB取引については自己申告制が最も実現可能なオプションであるとしている。BtoC取引については、中期的には技術を活用したオプションが有力であると指摘しつつ、暫定的には、簡素な登録制が必要とされる場合がありうるとしている。【図2参照】
      なお、これらの提案については、さらなる検討作業が必要であり、引き続きビジネスとの協力の下で行っていくことを提案している。

  6. 税務行政
  7. 税務当局が電子的な環境において効果的な執行をいかに確保しうるかという問題や、税務当局間で国際的な協力を強化するためにとるべき措置について検討している。また、納税者サービスの向上のために各国の税務当局が既にとりつつある一連のイニシャティブを確認している。

  8. 今後の検討課題と検討体制
  9. 租税委員会はいくつかの分野において多くの検討課題が残っていることを認識している。直接課税、消費課税、税務執行の主要論点について、技術的観点からの助言を含め、現行のTAGプロセスの補強や、協力的な国際的議論をさらに奨励するため、非加盟国や民間との対話を継続していく予定である。
    なお、租税委員会の報告書の概要は、財務省のホームページでも閲覧可能である(http://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/sz031.htm)。



図1 消費地の定義についてのガイドライン
図1 消費地の定義についてのガイドライン
図2 消費税を課税する場合の微税メカニズム
図2 消費税を課税する場合の微税メカニズム
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