経団連くりっぷ No.143 (2001年3月8日)

新産業・新事業委員会 起業家懇談会(座長 高原慶一朗氏)/2月19日

起業家を受け入れる社会風土が必要

−第2回起業家懇談会を開催


わが国の経済が活性化するのには、新産業・新事業が絶え間なく出現する環境が必要である。そこで、矢内廣 ぴあ社長ならびに伊藤穰一 ネオテニー社長よりベンチャー企業をめぐる業態等について説明をきき、今井会長をはじめ経団連首脳との間で意見交換を行った。

  1. 矢内 ぴあ社長説明要旨
  2. 大学4年時に雑誌「ぴあ」を創刊してから来年で30年になる。秋には、株式公開を予定している。
    昨年、ロンドンで発表された「グローバル・アントレプレナーシップ・モニター」という調査報告によると、起業家活動と国の経済成長には密接な関係があるという。日本の起業家度は主要21ヵ国中、下から2番目であった。
    最近、日本でもさまざまなベンチャー起業支援制度が整備されてきたが、ベンチャー企業は必ずしも伸びていない。日本でベンチャーが育たない本当の理由は何だろうか。規制緩和の大合唱も、特定のl達からすればそれが既得権の放棄につながるため、表向きに言っていることと本音が必ずしも一致していない。結局のところ日本の企業社会は、談合がそうであるように、企業内ベンチャーには積極的でも、企業外ベンチャーには決して寛容ではないように思える。
    これに対し、米国では、ベンチャー企業を積極的に活用している。例えば、1996年のアトランタオリンピックでのチケット販売は、ゴールドスポンサーのIBMが、創業間もないベンチャー企業とパートナーシップを組んで成功させた。日米の企業社会風土には大きな違いがある。

  3. 伊藤 ネオテニー社長説明要旨
  4. 10数年前から、デジタルガレージ、インフォシークをはじめ10社程、会社を立ち上げてきた。しかし、ベンチャーはつくるのが大変だという事がわかり、インキュベーターであるネオテニーを設立した。
    日本のベンチャー支援は、シリコンバレーを真似ようとしているが、文化が違うため根本的に無理である。日本では、大半の技術、人材、資産が大企業にある。
    日本で必要なのは、大企業の技術、人材、資産を引っ張り出し、ベンチャー企業と結びつけることである。今後は大企業とベンチャー企業との連携が重要になる。インターネット以外の分野からも、ベンチャー企業が多数生まれるようにしなければならない。
    社会的な支援も必要である。慶應義塾大学の藤沢キャンパスの学生は、ベンチャー的に教育を受けているが、それでも就職するのは大企業である。教育を変えて、親の意識が変わるのを待っていたのでは間に合わない。インターネットはここ3〜5年が勝負である。


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