経団連くりっぷ No.143 (2001年3月8日)

輸送委員会 企画部会(部会長 横山善太氏)/2月15日

国土交通省の物流政策

−港湾のフルオープン化・港湾手続のワンストップサービス化・鉄道貨物政策


産業新生会議等における経団連の働きかけを契機に、国土交通省では、港湾のフルオープン化やワンストップサービス化のタ現に向けて、来年度に、港湾物流効率化推進調査を行うことにした。また、来年度は、総合物流施策大綱の改定が予定されている。そこで、国土交通省政策統括官付の鈴木昭久 企画官ほかを招き、(1)港湾のフルオープン化、(2)港湾手続のワンストップサービス化、(3)鉄道貨物政策の3点を中心に、国土交通省の物流政策について、説明をきくとともに懇談した。

  1. 国土交通省側説明要旨
    1. 鈴木昭久企画官(総括)
    2. 省庁再編により、国土交通省の物流政策は、政策統括官(局長クラス)が中心となって取り組む。また、関係部局の相互連携を図るため、関係局長を委員とする国土交通省物流施策推進会議を設置した。平成13年度予算でも、省内連携施策として、

      1. 電政府実現のための行政情報システムの整備、
      2. 環境問題への対応として交通需要マネジメント(TDM)等の総合的推進、
      3. 物流施設等における物流効率化への阻害要因の解消(物流バリアフリーの推進)、
      4. マルチモーダル交通体系連携整備事業の創設、
      等に注力していく。
      今年6月を目途に、1997年に策定された総合物流施策大綱の改定を行うべく、現在、省庁横断的な検討作業を行っている。

    3. 海事局港運課 永井一浩課長補佐
      −港湾の24時間フルオープン化
    4. アジアをはじめとした世界主要港では、コンテナの荷役作業に日時による制約がないという実態を受け、経団連をはじめ関係各界から、わが国でも港湾の24時間体制を推進すべきとの指摘がある。しかしながら、わが国の港湾でも、年末年始の5日間を除く360日、平日は午前8時〜翌朝午前4時まで、日祭日は午前8時30分〜午後4時30分までの時間帯で、荷役作業が可能である。また、荷役料金の夜間等の割増率が高いことがわが国のフルオープン化の推進を実質的に妨げているとの指摘があるが、割増率も海外主要港と比較して法外なレベルではない。さらに、昨年11月には、港湾運送事業に係る参入規制や料金規制が緩和され、今後、これら規制緩和を中心とした構造改革に伴う効果が期待される。
      このように、運営時間・荷役料金ともにわが国の港湾フルオープン化の状況は、かなり進展しているが、今後、より一層、国際的に遜色のない港湾サービスの提供を目指し、関係者の取組みを積極的に支援していく。来年度には、港湾物流効率化推進調査を実施し、荷主・船社・港運事業者のニーズ、労働力コスト、港湾管理者の意向等について検討を行い、港湾の24時間フルオープン化等、港湾荷役の更なる効率化やサービス向上を図りたい。

    5. 港湾局環境・技術課 津田修一技術調査官
      −港湾緒手続きのワンストップサービス化
    6. 1999年10月から港湾EDIシステムが稼動した。同システムは、船舶の入出港に際して、入出港申請者が、港湾管理者と海上保安庁(港長)に対して、書面で別々に申請・届出してきた行政手続きを1度の電子手続きで可能にしたシステムである。2000年11月からは、同システムの活用により、10種類の行政手続きが可能になった。同システムでは、

      1. Web(港湾EDIシステムのホームページ上の様式に情報を入力する方式)、
      2. UN/EDIFACT(UN/EDIFACT形式の情報をE-mailに添付して送信方式)、
      といった2種類の方式の選択が可能である。
      港湾EDIシステムは、港湾諸手続きの一部簡素化に役立ったものの、船舶の入出港時には、依然として、税関など複数の港湾関係省庁に対し、同様の書類を多数提出しなければならない。
      そこで、来年度の中頃を目途に、港湾EDIシステムと通関手続等のシステムであるSea-NACCSとの相互接続を行うべく、関係者間で調整を進めている。完全接続後は、申請者が、Sea-NACCSに所定項目の入力を行えば、税関・ならびに港湾管理者・海上保安庁等への輸出入港湾諸手続きが一度に可能となる、港湾手続のワンストップサービスが実現する。また、効率性向上の観点から、今後いかに同システムの利用率をあげていくかが課題である。

    7. 鉄道局業務課 添田慎二貨物鉄道室長
      −貨物鉄道の現状と課題
    8. 鉄道による貨物輸送量は、45年間下落し続け、輸送シェアは、52%(55年)から4%(1998年)に激減している。また、鉄道貨物を担うJR貨物は、1993年期から連続して経常赤字を計上している。
      この様な状況の中で、貨物鉄道は営業用トラックに比べCO2排出量が約1/8であり、環境に配慮した効率的な物流を推進していく観点から、政府は、貨物鉄道に対して、

      1. インフラ支援(補助率3割)、
      2. 固定資産税等の税制優遇措置、
      3. アボイダブルコストルールに基づく低廉な線路使用料の措置、
      といった支援策を講じている。
      また、大井埠頭で荷揚げしたコンテナを東京貨物ターミナル駅までドレージしているコストの削減が期待できることから、大井埠頭への鉄道引込線を整備すべきとの指摘を受け、来年度、同プロジェクトに関し、港湾局と鉄道局で共同調査を実施することにした。

  2. 経団連側意見(要旨)
    1. 国土交通省の取組みは、是非進めてほしいが、わが国の港湾は、シンガポールや諸外国の港湾ノ比べ、非常に遅れている。わが国の国際競争力確保の観点から、港湾運営改革をスピードアップして実施すべきである。

    2. 港湾のワンストップサービスの推進では、港湾統計情報も含め、提出書類の削減を図るべきである。


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