経団連くりっぷ No.143 (2001年3月8日)

貿易投資委員会 総合政策部会(部会長 團野廣一氏)/2月9日

WTO新ラウンド立ち上げをめぐるわが国の戦略

−外務省 伊原課長よりきく


本年11月にカタールで開催されるWTO第4回閣僚会議を目処に新ラウンドを立ち上げるべく、内外でさまざまな動きが活発化しつつある。わが国政府の今後の戦略について外務省経済局国際機関第1課の伊原純一課長より説明をきいた。

○ 伊原課長説明要旨

  1. 広汎なアジェンダの必要性
  2. ジュネーブでは、WTOの新ラウンド交渉の立ち上げに向けた動きが活発化しているが、日本政府としても積極的にイニシアティブを発揮したい。WTOのムーア事務局長も述べているように、夏までに、交渉アジェンダについて加盟国間の大枠のコンセンサスを得ることが、特に重要と考える。
    交渉アジェンダについては、市場アクセスを中心とする狭い範囲に止めたいという立場と、これに貿易ルールの強化をも加えた広汎なものとしたいとの立場がある。わが国はEUと共に広汎なアジェンダを望んでいる。
    狭いアジェンダでは、

    1. わが国が望むアンチダンピング、投資ルール等の交渉ができない、
    2. 多様な加盟国のニーズを満足することができないため交渉の進展が期待できない、
    といった理由からである。

  3. アジェンダの内容
    1. アンチダンピング:
      現行のWTOアンチダンピング協定を改正、強化することで恣意的・保護主義的なアンチダンピング措置の発動に歯止めをかける必要がある。他方、見直しに消極的な国は、わが国が協定の見直しを通じて事実上アンチダンピング措置の発動を不可能にしようと目論んでいるという疑念があるようだ。
      わが国の狙いはあくまでも恣意的な措置発動の防止にあるので、具体的な交渉内容の絞り込みが必要である。

    2. 投資:
      投資ルールの整備については、一部の途上国の反対が根強く、多国間でのコンセンサスが難しいのが実情である。そこで、欧州委員会は、全ての加盟国が交渉に参加するが、各国の判断で交渉結果を受諾しないことも認めるという「プルリラテラル協定方式」の導入の是非を検討している。
      この考えは注目に値するが、途上国に配慮し、協定の中身を調整することで、多国間の協定とする余地もあると考えている。

  4. 今後の戦略
  5. 交渉アジェンダをめぐる加盟国間のコンセンサスを形成するには、当該アジェンダをとりあげたい国がイニシアティブをとり、友好国による非公式会合を開催し、どのような内容についてどこまで交渉すべきかについて議論を深めていく必要がある。わが国は、アンチダンピングと投資について、引き続きこうした会合を主催していきたい。
    また、新ラウンド立ち上げに向け、EU、米国のみならず、主要途上国や中堅国との意思疎通の強化が不可欠である。


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