経団連くりっぷ No.143 (2001年3月8日)

国土・住宅政策委員会 地方振興部会(部会長 阿比留 雄氏)/2月7日

皆が楽しめるユニバーサル・ツーリズムの推進


昨年10月、『21世紀のわが国観光のあり方に関する提言』をとりまとめた地方振興部会では、今後、同提言内容の実現に向け、具体的なフォローアップを行っていくことが課題である。そこで、フォローアップの一環として、高齢社会における人づくりやユニバーサル・デザインの普及・啓発を推進している内山工房の内山早苗代表を招き、経団連提言でも提唱しているユニバーサル・ツーリズムの今後のあり方等について説明をきいた。

○ 内山代表説明要旨

  1. ユニバーサル・デザインとは何か
  2. ユニバーサル・デザインとは、年齢や障害の有無にかかわらず、全ての人にとって安全で快適なモノ、建物、空間、サービスをデザインする考え方であり、今後、国際社会のグローバル・スタンダードとして、また、わが国少子高齢社会の課題を解決する鍵として、重要なキーワードとなろう。
    とりわけ、わが国の高齢化率は他国に類を見ないスピードで上昇しており、社会保障や介護等の面から、われわれの生活に大きな影響を及ぼしている。こうした中、

    1. 共生社会(ノーマライゼーション)、
    2. 男女平等社会(ジェンダーフリー)、
    3. 障害のない社会(バリアフリー)、
    4. 循環型社会(エコロジー)、
    を柱とするユニバーサル環境の構築が求められる。

  3. 全ての人が観光を楽しむために
  4. 1995年の観光政策審議会答申に謳われているように、旅をする権利は全ての人にある。旅には自然の治癒力が備わっており、旅をする自由は、とりわけ、障害者や高齢者など、行動に不自由のある人々にとって貴重である。世界保健機関(WHO)の調査では、平均寿命から病気や事故等で健康を損ねた年月を差し引いた「健康平均寿命」について、日本は74.5歳で世界一となっている。わが国における高齢者の8割は健康であり、旅行に対する意欲も旺盛である。21世紀、観光を振興していくためには、高齢者も障害者も皆が自分の行きたいところに行き、楽しめる観光の環境整備が求められている。こうした課題を解決する上からは、ユニバーサル・デザインの視点で観光を見直すことが重要である。

  5. ユニバーサル・ツーリズム推進に向けて
  6. 皆が楽しめるユニバーサル・ツーリズムの推進は、地域産業の活性化にも大きく貢献するものと期待される。但し、自然景観上、バリアが多い観光地も少なくない中、自然環境を破壊して何から何までバリアフリーにしても意味がない。重要なことは、高齢者や障害者の立場に立ち心のバリアを取り除くことである。そこで、観光現場のスタッフが高齢者・障害者の観光に対してサポートを行う制度を確立するため、公的な資格を設けることも検討すべきである。
    交通バリアフリー法施行に伴い、公共交通機関のハード整備が進んでいくと思われるが、駅員の対応等をみると、障害者の視点に立ったホスピタリティ教育はほとんど行われておらず、改善の余地がある。


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