経団連くりっぷ No.144 (2001年3月22日)

第29回中国地方経済懇談会/2月22日

新たな経済社会の構築と中国地域の発展


経団連・中国経済連合会(中国経連)共催の標記懇談会が広島市において開催された。地元経済人約200名の参加のもと、経団連側は今井会長、辻・前田・岸・香西の各副会長が出席し、中国経連首脳と最近の経済動向、地域産業の活性化、社会基盤整備等について意見交換した。また、懇談会に先立って広島県産業科学技術研究所を訪問し、産学官連携のもと進められている人工皮膚・臓器等の組織再生プロジェクト等を視察した。

  1. 中国経連側発言要旨
    1. 開会挨拶
      多田 公煕会長(中国電力会長)
    2. 中国経連実施の景気動向アンケートによると、中国地方の景況感は再び悪化しており、当面、景気を民需主導の本格的な回復軌道に乗せることが最重要課題である。
      私は、21世紀を「自存共育」、すなわち、個人や企業、国・地方がそれぞれの役割・責任を果たしつつ、共に発展し、環境や自然と調和する経済社会を構築していくべき時代と考えており、構造改革の推進や地方分権の実現がその鍵となる。
      中国地方は、日本海沿岸地域や瀬戸内海沿岸地域等に、多様な自然、歴史、文化、産業が存在する。各々の特徴を活かしつつ、交流と連携を通じて広域経済文化交流圏を形成する地域づくりを進めていきたい。

    3. 地域経済の現状と新生へ向けて
      徳永 幸雄 副会長(広島ガス会長)
    4. 中国地域の経済情勢については、鉄鋼・電気機械等IT関連産業に明るい兆しが見えてきたが、個人消費が低迷し、雇用環境も依然として厳しい。景気の本格的回復のためには日本経済新生の道筋を早急に明らかにするとともに、行政と一体となって産業の振興に努力する必要がある。
      中国経連では、(1)IT推進を核とした地域産業の振興方策、(2)循環型社会形成へ向けた環境分野の振興、(3)アジア諸国との経済交流の促進等に取り組んでいる。(1)については、ITの積極活用によって、創造的な企業活動と新しいビジネスモデルの創出に結びつくよう取り組んでいきたい。
      (2)に関しては、循環型社会の形成は国家レベルの課題となっており、瀬戸内海沿岸では、鉄鋼・化学・機械産業等の集積を活かした廃棄物の3R(削減、再使用、再活用)事業の創出等について検討している。
      (3)については、東アジアとの経済交流の促進に向け、中国経済産業局と共同で産業経済交流促進プランの検討を進めている。

    5. 21世紀にふさわしい分権型社会の構築
      橋本 宗利 常任理事(広島ホームテレビ社長)
    6. 本年1月の中央省庁等再編に伴い、中央が所管してきた事務の一部が地方支分局に移譲された。今後とも一層の権限移譲を進めるとともに、地方自治体との連携を密にした行政運営を期待したい。
      一方、行政の高コスト構造是正等の観点から市町村合併が注目されているが、中国地方における市町村合併への動きは鈍い。このため、

      1. 国・自治体による合併啓発事業の計画的推進とともに、自治体が住民に対して明確な将来像を提示すること、
      2. 社会インフラの整備、
      3. 地方分権に相応しい地方財政制度の構築、
      が必要である。

    7. 瀬戸内海地域の総合整備
      宇田 誠 副会長(広島銀行会長)
    8. 昨秋、中国経連は四経連と共同で、瀬戸内海沿岸域の「環境保全、景観保護」に向けた具体的施策の一つとして、現存する白砂青松の保全ならびに創生について、農水省・環境省など関係各方面に働きかけた。
      瀬戸内海地域では公共および民間の未利用地が1,500ha存在しており、未利用地の有効活用が喫緊の課題である。医療・福祉、環境、情報など今後の成長が期待される分野の新規産業の立地促進に努めるとともに、公有水面埋立法の用途規制緩和等によって、国民的保養地など貴重な地域資源として活用したい。

    9. 山陰・日本海地域の振興
      皆美 健夫 副会長(島根県商工会議所連合会会頭)
    10. 山陰・日本海地域は多軸・分散型発展を支える日本海側の軸であると同時に、環日本海交流のゲートウェイとしての役割を担う。昨年10月の鳥取県西部地震の風評被害等により、山陰・日本海地域の観光産業も影響を受けたが、現在、鳥取・島根両県が一丸となって「元気です!山陰」をモットーに鋭意取り組んでいる。
      中国経連では山陰地域を「21世紀のまほろば」と位置付け、中国地方整備局と「夢街道ルネサンス推進会議」を設立するなど観光振興に取り組んでいる。また、中海・宍道湖広域都市圏など山陰地域の拠点都市圏の形成等について検討を重ねている。

    11. 中国地域の観光振興
      仁田 一也 常任理事(瀬戸内海汽船会長)
    12. 中国地域では、中国地域の観光振興と交流人口の増大を図るため、昨年5月、産官連携のもと「中国地域観光推進協議会」を設立した。当地域をPRするためのキャッチコピーを「トキメキちゅうごく旅物語」とし、山陰・日本海側の「日本海まほろば海道」、瀬戸内海側の「瀬戸内歴史ろまん海道」など5つの広域観光ルートを策定した。今後、個別の観光施設や企業等との連携も含む新しいメニューを策定したい。
      経団連でも昨年10月、『21世紀のわが国観光のあり方に関する提言』を公表された。これを機に、地域の観光振興への支援とともに、当地域への来訪をお願いしたい。

    13. 自由懇談
    14. 本年7月から9月末まで山口県阿知須町で開催される「山口きらら博」について、林孝介副会長(山口県商工会議所連合会会頭)より紹介があった。また、木村創ジェイ・エム・エス社長(経団連評議員)より、製造業が活動しにくい日本の現状と課題について指摘がなされた。

  2. 経団連側発言要旨
  3. 前田副会長より税制改革・社会保障改革への取組み、岸副会長よりIT革命推進のための環境整備、また、辻副会長より環境問題への対応、香西副会長より魅力ある中国地域の活性化について説明があった。
    最後に今井会長より、中国地方におけるさまざまな取組みを踏まえつつ、経団連として構造改革に向け積極的に取り組んでいくとの総括があった。


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