経団連くりっぷ No.144 (2001年3月22日)

貿易投資委員会 総合政策部会(部会長 團野廣一氏)/2月23日

日本は、東アジアの環境変化に対応した政策を展開すべき

−経済産業省よりきく


総合政策部会では、産業界の視点から、今後のわが国通商政策のあり方をめぐり具体的な検討を進めている。その一環として、経済産業省通商政策局の藤田昌宏アジア大洋州課長および梅原克彦地域協力課長より、東アジアにおけるわが国通商政策の現状と今後の展望について説明をきくとともに懇談した。

○ 経済産業省側説明要旨

  1. 東アジアにおける中国の台頭
  2. 近年、中国への海外直接投資が急速に拡大しており、受入額でASEANを逆転した。他方、中国は、直接投資や人材育成等の経済協力を通じて、ASEANに対する影響力の拡大を目指している。また、地方農村からの安価な労働力の供給と高い技術力によって、電子部品のようなハイテク製品から縫製品のような労働集約的産業まで幅広い分野において競争力を持ち始めている。

  3. ASEANの求心力の低下
  4. ASEAN諸国は、

    1. 多額の不良債権等のアジア通貨危機の後遺症、
    2. 1人当たりGDPで100倍近い域内格差、
    3. インドネシア、タイ、フィリピンといった主要国の政治的混乱等によるリーダーシップの欠如、
    4. AFTA(ASEAN自由貿易地域)の進捗の遅れ、
    等により求心力が低下している。

  5. 東アジアにおけるFTAの動き
  6. 日本とシンガポールの経済連携協定(EPA)交渉が開始されたが、シンガポールは、韓国、米国、豪州等に対しても積極的にFTAを働きかけている。
    昨年11月のASEAN+3(日本、中国、韓国)首脳会議において、ASEAN+3の東アジア経済圏の検討が提案された。しかし、ASEANが消極的になっていることもあり、短期的な実現の可能性は低いだろう。

  7. 日本の積極的な対応が必要
  8. ASEANは5億人の市場であり、経済統合が進めば、日本企業は事業展開がしやすくなる。日本は、

    1. 二国間投資協定の締結等を通じた投資環境の整備、
    2. 政府開発援助の強化、
    3. 法制度の整備支援、
    4. 標準・特許制度の共通化、
    5. 中小企業の育成支援、
    等によりASEANの経済統合を支援する必要がある。
    また、ASEAN諸国は、農林水産物を中心とした日本市場の閉鎖性や近年の日本からの直接投資の低迷を懸念しており、日本はこれに対応する必要がある。中国に対しては、WTOへの加盟を積極的に支援すべきである。韓国とのFTAも早期に締結する必要がある。
    わが国通商政策の基本はWTO体制にあるが、そのうえで、WTOに先行できる分野において二国間や地域間の自由貿易協定で自由化やルールづくりの取組みを進めてWTOを補完する、重層的な取組みが重要だと考える。シンガポールとのEPAについては、こうした課題に対応するべく、関税撤廃にとどまらず、サービス・投資の自由化、電子商取引関連制度の調和、貿易手続のワンストップ化、人の移動の円満化等幅広い分野を対象とする協定を締結することを目指している。


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