経団連くりっぷ No.145 (2001年4月12日)

柳澤金融担当大臣との懇談会(座長 片田哲也 副会長・金融制度委員長)/3月14日

日本経済の再生のために不良債権のオフバランス化が急務


ペイオフ解禁を控えて金融システムの不安が指摘される中で、不良債権処理をはじめとする金融・証券の諸課題について、柳澤伯夫 金融担当大臣と経団連首脳が意見交換を行った。

  1. 柳澤大臣説明要旨
  2. 不良債権については誤解も多い。不良債権は引当等により処理が行われており、不良債権の残高が、即ち金融機関の不健全さを意味するものではない。しかし、引当済とはいえ不良債権の存在は、金融機関側では、収益力の低下等により円滑な資金供給を過度に慎重化させるといった問題や、産業側では過剰債務により新規分野への投資が困難となるといった問題があり、経済全体の観点からみれば悪影響を及ぼす。したがって、日本経済再生のためには、不良債権のオフバランス化が重要である。
    オフバランス化の手段としては、

    1. 当該不良債権の売却、
    2. 法的な強制による償却、
    3. 私的整理における債権放棄、
    4. 部分償却、
    などがある。米国は売却を通じた不良債権処理がスムーズに進んだ経緯があるが、これは、米国では基本的にプロジェクト単位のファイナンスが多いため、最初から債権にミシン目が入っており、売却を進めやすかったということがある。企業の処理には、法的枠組みと私的枠組みのものがあり、また清算型と再建型がある。清算型による処理は、当該企業の価値の喫損が大きく、企業の処理には、再建型による処理が重要である。
    法的な再建について改善すべき点がないか、私的な再建についてもどのような枠組みを整備すべきかを考えたい。また、法的と私的の中間的な「公的」枠組みとして、信頼性の高い再建計画づくりのために、金融庁だけでなく、経済産業省や国土交通省とも協力して何らかのスキームを考えたい。いずれにしても、再建の基本は、企業において存続させるべき部分と整理すべき部分とにミシン目をつけてきちんと分けて対応するということ。現段階では、不良債権処理に関する数値目標は検討していない。

  3. 意見交換(要旨)
  4. 今井会長:
    現状を打開するためには構造改革しか手はない。優良企業が体力を失わないためにも、業界再編が必要であろう。

    岸副会長:
    不良債権の大半を占める中小企業向け融資の処理については、中小企業中心の融資を行っている金融機関に対する影響を注視する必要がある。

    鈴木副会長:
    消費の冷え込みは深刻であり、流れを変えるために、先行きに対するビジョンを示すべきである。

    荒木副会長:
    日本経済の閉塞状態はいわば「千日手」であり、何らかのブレイクスルーが必要だ。多少の痛みは伴っても構造改革を推し進めるべきである。

    片田副会長:
    証券市場の低迷は銀行の経営基盤にも影響を与える。証券税制等に的を絞り、実現に向けた具体的なスケジュールを呈示することが市場に短期・長期で良い効果を及ぼす。

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