経団連くりっぷ No.145 (2001年4月12日)

新入会員代表者との懇談会(司会 内田事務総長)/3月22日

新入会員代表者より当会に対する率直な意見・要望をきく


経団連では、新しく入会した会員の代表者から、各企業・業界の当面する課題や要望等を聞き、活動に反映させている。当日は新入会員代表者6名および今井会長、内田事務総長ほか事務局役員5名が出席し、率直な意見交換を行った。

○ 新入会員代表者発言要旨

  1. 穴吹工務店 穴吹英隆 社長
  2. 当社は今年の1月で設立40周年を迎えたが、その間、連続増収を続けてきた。現在、全国41都府県に77の事業所を有し、マンションを中心に住宅関連事業を展開している。バブル期は、東京など政令指定都市での事業が売上の半分程度を占めていたが、現在は8割が地方都市である。マンション供給ランキングは全国5位で、戸建て・賃貸住宅を含め年間約6000戸を供給。用地取得から施工・販売の一貫体制に特徴があり、それがお客様の信頼を得、全契約の4割が紹介契約となっている。
    住宅ローン減税制度が2003年12月まで再延長されたが、時限立法であることに加え、需要の先食いによる影響もあり、業界は厳しい状況を迎えつつある。現在の減税制度は税額控除方式だが、いびつな側面は否定できない。米国同様、所得控除方式に転換し、制度を恒久化すれば、土地の流動化が進み、税収面でも効果があると思う。

  3. JSAT 吉田倬也 社長
  4. 当社は8機の衛星を所有し、アジアで最大級、世界でも5指に入る衛星通信会社である。現在、“JSAT, Expanding Horizons”をスローガンに、海外にも積極的に進出し、事業領域の拡大を進めている。
    当社の事業は、衛星のトランスポンダ(電波中継機)を貸す、いわば空の上の不動産屋だったが、これからはコンテンツに直接関り、空の上で各種事業を展開していきたい。通信分野でも、衛星を使ったインターネットなど双方向性の事業を推進しており、大学などのネットワークの他、小中学生向けの事業にも取組中である。山間部など光ファイバー網の届きにくい場所でも、衛星を利用すれば、容易にIT化の進展が見込める。
    当社はIR活動に力を入れており、より開かれた企業への改革を推進している。日本は外圧がないと何も改善できないと見られており、行財政の改革に加え、企業・業界も構造改革を進める必要がある。

  5. シスコシステムズ 黒澤保樹 社長
  6. 当社はIT革命に必要なブロードバンドインフラを支えるデータ交換機などを提供している。ドットコム企業と誤解され、株式時価総額がGEを抜いて世界一になったこともある。日本においては特にここ2〜3年で、事業を飛躍的に拡大してきた。
    わが国のIT革命は、諸外国に比べかなり遅れている。政府も力を入れているが、学界などに比べ、産業界の声があまり反映されていないように感じられる。また、官・学の関係に比べ、産・学の連携が少なく、誤解も多い。IT革命推進のためには、産業界がリード役となり、米国の様に産・学協同のプロジェクトを推進する必要がある。

  7. 住商リース 石井光春 社長
  8. グローバル化の進展により、企業はバランスシート重視の経営、キャッシュフロー経営、格付け重視の経営にシフトしており、所有から利用への流れに沿うリースのコンセプトは、時流に乗り、追い風が吹いている。他方、リース会社は三百数十社を数え、競争は激化の一途である。リース業界は、ノンバンクと呼ばれる業態の一つだが、上場企業も少なく、もっと業界全体のプレゼンスを高める必要がある。
    日本企業はビヘイビアを向上させ、透明度を高め、情報公開を積極的に行う必要がある。外国の投資家から見て、日本企業はバランスシートの構造に問題があり信頼がおけないと写れば、株価に大きな影響を及ぼし、日本は特殊な国と見らてしまう。企業自身の改革が必要不可欠である。

  9. 共和電業 寺野健夫 社長
  10. 当社は実験研究・産業機械・計測エンジニアリングの各分野を事業領域としている。実験研究では、造船、自動車、航空機、重電等の設計上の安全性・耐久性を確認する「歪ゲージ」を核に、応用機器を開発。産業機械では、FA機器の中の生産ライン試験装置などを製造。計測エンジニアリングでは、ダムの施工管理や安全性の確認、データ蓄積用の計測器等をつくっている。
    わが国においては、エレクトロニクスや自動車は生産性が高いが、計測器は少量多品種の生産を求められる関係上、生産性は高くない。また、知識集約型的な要素が多いため、後継者の育成・人材の確保が重要だが、近年は新卒学生の学力低下が著しく困惑している。基礎のできていない人材を入社後にOJTで訓練しても限界がある。日本を支えるモノづくりを守るためには、理工系の優秀な学生を育てる必要がある。経団連も大学・教育改革に、より積極的に取り組んで欲しい。
    月刊Keidanren3月号の今井会長と近藤たけしさんの対談の中で、5つの改革を提唱されているが、中でも税制改革は重要だ。法人税は減税されたが、退職給与引当金が縮減されるなど、課税が強化されており、本当の意味での減税になっていない。国際競争力を強化するためには、更なる投資が必要であり、実質的に効果のある減税策を是非進めて欲しい。

  11. パシフィックコンサルタンツグループ 荒木民生 社長
  12. 当社は長年、“パシコン”の愛称で親しまれ、今年、創立50周年を迎えた。商法改正により昨年、国内部門と海外部門、関係会社約20社を統合した持株会社を設立した。
    公共事業の企画・設計・管理等が、当社の事業の大部分を占めている。わが国のインフラが国際競争力を問われる時代になり、空港や港湾は勿論、道路や都市計画・住宅のあり方等も間接的に日本の競争力に大きな影響を与える。大局的な見地での判断や論議が必要だ。
    近年、日本は諸外国から二流国と見られているように感じる。日本再生のためには、徹底したリアリズムと競争性の追求を進め、日本人の長所であるチームワークと正確性をより高めながら、率先して問題解決にあたることが必要だ。日本人の特徴や良さを生かせば、決して欧米に劣らない。経団連は、個別事情を乗り越えて、骨太な改革を推進して欲しい。


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