経団連くりっぷ No.145 (2001年4月12日)

ハートリッジWTOサービス貿易部長との懇談会(司会 團野廣一 貿易投資委員会総合政策部会長)/3月7日

WTOサービス貿易自由化交渉の展望


昨年2月より行われている、WTOのサービス貿易自由化交渉の現状と今後の見通し等について、来日したWTOサービス貿易部のハートリッジ部長より説明をきいた。

○ ハートリッジ部長説明要旨

  1. サービス交渉の現状
  2. サービス貿易自由化交渉は昨年2月に開始され、この1年間、サービスの分類問題、セーフガードや国内規制等に関するルールづくりを中心に議論した。今後は、3月末に予定されている評価会合を経て、4月以降、各国の市場アクセスに関する本格的な交渉が行われる見込みである。
    ウルグアイラウンド交渉立上げの際は、多くの途上国がサービス自由化に反対し、サービス交渉の取扱いがWTOの設立をも左右しかねない状況となっていた。しかし、今日では途上国もサービス自由化に一定の理解を示している。
    その背景には、

    1. サービス自由化の速度を各国政府が自らコントロールできるような枠組みとなっていること、
    2. 自由化により、外国のサービス産業の投資の誘致が促進されること、
    といった要因がある。

  3. 分野別交渉の見通し
  4. 市場アクセスについては、米国が12分野、日本が9分野、EUが11分野について交渉提案を出しており、4月以降、具体的な交渉が進捗することとなる。特に、流通、環境、海運、エネルギー、金融、通信等の分野が重視されよう。また、インドなどの途上国が関心を有している、人の自由移動も重要なテーマとなろう。
    交渉は基本的に二国間ベースの自由化交渉(リクエスト・オファー方式)によりカバーされるが、必要に応じ、特別の交渉グループを結成し、多国間での折衝を行う場合もあろう。

  5. 新ラウンドとの関係
  6. サービス交渉で大きな成果をあげるためには、新ラウンドと結びつける必要がある。すなわち、サービス交渉のみでは、途上国にとって交渉のメリットが見えにくい。そこで、途上国側の譲歩を最大限に引き出すべく、譲歩の見返りとなり得るアジェンダを含む、包括的な新ラウンドを立上げる必要がある。
    本年11月にカタールで第4回WTO閣僚会議が開催される。同会議を目処に新ラウンドを立上げるためには、日本、米国、EU、カナダの「四極」が新ラウンド交渉に積極的にコミットし、その達成すべき目標について意思を統一する必要がある。さもなければ、シアトル閣僚会議の失敗の二の舞となろう。


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