常務理事 立花 宏
規制改革は、構造改革の切り札として内外の期待が高いが、新3か年計画での経団連要望の実現度は4割弱にとどまり、先送りされたものが少なくない。
3月30日に新たな規制改革推進3か年計画(第3次)が閣議決定された。新計画には、17分野計658にのぼる個別事項の改善計画が盛り込まれたが、今回はそれにとどまらず、経済社会の構造改革を促すための取組み方針を提示しており、これまでにない特色といえる。具体的には、IT、医療、福祉、雇用・労働、教育、環境といった各分野について中長期的な改革課題と、改革の基本的方向を提示した上、「公的規制にとどまらず、システム全体について抜本的かつ広範な取組みを要する分野については、政府として戦略的かつ抜本的な改革に向け取り組むこと」とする旨、明言している。
確かにこうした指摘は今後の改革に向けた戦略的な布石といえるが、日本における規制改革の難しさは、こうした抽象的な問題提起のままでは一向に前進せず、今後、規制改革を求める側が、役所や既得権をもつグループに対して、一つひとつ現行規制の不合理性などを具体的に実証していかなければならない点にある。極端なケースでは、政治や役所から反対派の説得を求められることすらある。こうした既得権重視の経済社会風土が、人々のイノベーションのマインドを萎縮させ、閉塞感をもたらしている。4月以降は、内閣府に総合規制改革会議が設けられることになったが、改革の成否は、国民や企業の意識変革と政治のコミットがどの程度、得られるかにかかっている。
昨年10月、経団連はビジネスの現場から寄せられた個別の規制改革要望を担当委員会毎に精査した上、政府・与党へ提出した。今回の新3か年計画への反映状況をみると、下記の一覧表のとおり、完全またはほぼ完全に要望が実現したものが50、一部実現したもの85、対応方策なしが231となり、要望総数の4割弱が何らかの形で実現の方向にあるといえる。今回、成果があったと思われる事項を例示すると、インターネットに係る職業紹介規制の緩和、CSデジタル放送に係る外資規制の緩和、銀行の店舗設置の届出制化、民間による道路交通情報の提供容認、などがあげられる。
他方、年金、医療、環境、流通、運輸、通商、農業などの分野では、先送りされたものも少なくない。新3か年計画をみると、既に成立した法律や実施ずみの規制緩和措置をきちんと実施することをわざわざ明記したり(リサイクル関係等)、3年間ずっと検討するとだけ書かれていたり、医療関係ではレセプトの電算化について必要に応じて普及方策を検討するとするなど、これが3か年計画に盛り込まれる内容かと首をかしげるものも少なくない。政治のリーダーシップの低下が、こんなところにも出ているのかもしれない。
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* 項目数は、計画に対応し新たに分類した。 |