第628回理事会/3月27日
日本経済の先行きに不透明感が増す中、本年1月に内閣府に設置された経済財政諮問会議に民間議員として参加されている東京大学大学院の吉川洋教授から、日本経済の現状と同会議の役割などについて説明をきいた。
経済財政諮問会議は、本年1月6日に内閣府設置法に基づき誕生した新しい組織であり、議長および10名の議員の計11名で構成されている。議長である総理大臣の他、官房長官、経済財政政策担当、総務、財務、経済産業の各大臣および日本銀行総裁が議員として参加しており、これに民間議員4名が加わっている。
民間議員は、法律により非常勤となっている。「非常勤では不十分」との声もあるが、平均月2回の会議への参加の他、その準備にかなりの時間を割いており、通常の審議会委員に比べ相当の労力を要する。
会議の役割は、
景気動向は、内閣府が発表する景気動向指数(DI)で捉えられる。DIは、11の指標が3ヵ月前と比較して改善しているか悪化しているかを基に景気の方向を捉える統計であり、景気の上昇・減速の変化率を示したものではない。いわば坂が上りか下りかそれだけを見ているようなものである。そのため、実感と合わないと言われることがある。坂道が急であれば誰の目にも明らかであるが、緩やかな場合は実感が伴わないのと同じである。とはいえ、過去の実績から見ると、DIは、GDP、失業率、企業収益など経済の動向と大方符合している。
DIによれば、現在、日本経済は、一昨年4月を谷とする回復期にある。昨年は設備投資に主導され、その通りの動きを示した。当時、意見が分かれたのは、経済の回復力の強さについてであった。最も強気であったのが日本銀行であり、昨年8月のゼロ金利解除はそのような景気判断に基づくものであったと考えられる。先般、昨年第4四半期のGDP速報値が発表されたが、そこでも設備投資が好調であったことが成長率をプラスに引上げた。
問題は先行きである。3つの懸念材料がある。
第1は、消費に回復の兆しが見えないことである。設備投資および企業収益が景気回復を主導し、それが雇用および所得の増加に結びつくことによって消費が回復し、民需主導の成長軌道に乗るとの見方があったが、実際には未だ消費の回復は見られない。この状況は今年に入っても変わっていない。
第2は、これまで回復を支えてきた設備投資の動向である。機械受注は設備投資の先行指標であるが、その機械受注の先行指標とされているのが、機械受注の見通しと実績のズレを示す達成率である。機械受注そのものが減速する中で達成率も下がってきているため、今後は設備投資も減少することが予想される。既に発表されている新年度の設備投資計画に関する各種調査を見ても、マイナスの予想が多い。景気回復の主役である設備投資が息切れする恐れがある。
第3は、米国経済の動向である。いつまでも5%成長は続かないと多くの人が考えていたが、そうした予想が現実となってきた。米国経済が1%減速すると、日本の米国およびアジアに対する輸出が減少し、日本経済の成長率を0.2%程押下げるとの試算がある。この試算によれば、仮に米国経済が2%成長へと減速した場合、日本経済は0.6%足を引っ張られることになる。
以上の要因を考慮すると、新年度の日本経済は厳しい状況に置かれると予想される。
いわゆる量的緩和によって実質ゼロ金利へ復帰した。日銀は、この政策を消費者物価上昇率が安定的にゼロ%以上となるまで継続するとしており、金融面では、打つべき手はほとんど打たれたと言ってよい。今や投げるべきボールは政府の手にある。
さる2月27日の経済財政諮問会議に民間議員4名で「経済財政運営課題への具体的取り組みについて」と題するペーパーを提出した。ペーパーでは、政府に対して大きく2つのことを求めている。
第1は、経済構造の改革である。具体的には、
以上、政府としてはさまざまな課題を抱えているが、これまで経済財政諮問会議では、