経団連くりっぷ No.146 (2001年4月26日)

東南アジア訪問(団長 今井会長)/4月3日〜7日

タイとシンガポールを訪問して両国政府首脳、経済界トップと懇談


4月3日から7日にかけて、今井会長、上島副会長、森川評議員会副議長、安居日タイ貿易経済委員長、内田事務総長、藤原常務理事(幹事)が東南アジアを訪問した。今井会長の東南アジア訪問は1998年秋、2000年3月に続き3度目であるが、今回は、今年2月にタクシン新政権が誕生したタイと、現在政府間で経済連携協定の締結に向けて交渉が進んでいるシンガポールの2ヵ国を訪問した。両国ではそれぞれ、首相をはじめ政府首脳と会談したほか、経済界のトップとも意見交換を行った。

  1. 全般
    1. 経団連会長のミッションがほぼ毎年、アジアを訪問してきたことについて、両国とも高く評価しており、経団連への信頼にもつながっていた。

    2. 両国の首脳、閣僚、経済界トップとも、日本経済の動向に大きな関心を示した。加えて、緊急経済対策の内容やその効果、経済回復に向けた取組みとその成果に対する強い期待が表明された。

  2. タイ訪問(4月3日〜5日)の概要
  3. 会談する今井会長(左)とタクシン・タイ首相(右)
    1. タクシン首相のほか、ピタック副首相、アディサイ商務相、スリヤ工業相、ソムキット蔵相、チャトゥロン首相府相(投資担当)、スラキアット外相に会った。また経済3団体(タイ貿易院、タイ工業連盟、タイ銀行協会)のトップとも懇談した。

    2. 今年2月に誕生したタクシン内閣が、国内重視の保護主義的な経済政策をとるとの報道もあったことから、わが国経済界としての懸念を伝えた。その際、盤谷日本人商工会議所の資料をもとに、日系企業のタイ経済への貢献度(対タイ累積投資額の4割が日本からのもの、タイの輸出の10%が日系企業による輸出、日系企業による40万人の雇用創出、等)について、タクシン首相はじめ主要閣僚に説明した上で、これに対する新政権の理解と、経済政策・通商政策の策定に際しての十分な配慮を求めた。

    3. これに対しタイ側からは、

      1. 経済危機に際しての日本の政府、民間経済界からのさまざまな支援に感謝している、
      2. 新政権も対日関係を重要視している、
      3. 外国直接投資を引き続き歓迎する、
      4. 従来の投資優遇政策を基本的には変更せず、コミットメントも遵守する、
      との明確な回答があった。

    4. また、日本経済の現状について説明したところ、タイ側より、不良債権の実態や緊急経済対策の効果などについて強い関心が示された。また、タイ経済の回復との関係で、米国経済の減速に対する懸念がタイ側から表明された。

    5. タイ側からの要請としては、

      1. 農業技術の向上への協力ならびにタイの農産品・加工食品の輸入拡大、
      2. エレクトロニクス産業における部品産業・裾野産業育成への協力、
      の2点が挙げられた。こうした点については、今年10月下旬に日本で開催される日タイ合同貿易経済委員会の場なども活用してフォローアップしていくことになった。

  4. シンガポール訪問(4月5日〜7日)の概要
  5. ゴー・シンガポール首相(左)と談笑する
    上島副会長(中)、今井会長(右)
    1. ゴー・チョクトン首相、リー・シェンロン副首相、ジョージ・ヨー通産大臣をそれぞれ訪問して、両国関係やアジアの周辺国に対する見方などについて意見交換を行ったほか、シンガポール経済界のトップとも懇談した。

    2. ゴー首相はじめシンガポール側からは、日本シンガポール経済連携協定に対する経団連の協力を高く評価するとの発言があった。特にゴー首相からは、この協定の意義を、経済分野のみならず広い観点からとらえることが重要との発言があった。

    3. ヨー通産大臣からは、シンガポール政府が2002賦課年度の法人税額を24.5%に下げる旨決定したことにより、在シンガポールの一部の日系企業が日本のタックス・ヘイブン税制の対象になるという問題について、今後それらの企業ならびに日本政府と対応策について意見交換を行うとの説明があった。この点については、経団連としても、財務省等との意見交換を通じて事態の改善に協力することになっている。

    4. アセアンの将来ならびにAFTA(アセアン自由貿易地域)の実現性について、シンガポール側より、中国のWTO加盟を視野に入れると、アセアンが結束を強めることがアジアの安定のためにも必要との説明があった。また、AFTAの着実な実現はアセアンへの信頼を維持するために必要であることから、日本の働きかけも重要との発言があった。

  6. フォローアップ
  7. なお、今回の訪問の模様については、4月17日の経団連理事会において上島副会長より、また同日の報告会において今井会長はじめ各参加者より報告があった。報告会では、今後のフォローアップについても意見交換を行った。


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