経団連くりっぷ No.146 (2001年4月26日)

バスティン米国サービス産業連盟事務局長との懇談会(司会 團野廣一貿易投資委員会総合政策部会長)/3月30日

WTO新ラウンドの立ち上げならびにサービス交渉の推進に期待


WTOサービス貿易自由化交渉は、今後セクター別の本格交渉へと移行する。一方で、今年11月にカタールで開催予定の第4回閣僚会議において新ラウンドを立ち上げるべく努力が続けられている。米国サービス産業連盟(CSI)のバスティン事務局長より米国産業界の期待について説明をきいた。

○ バスティン事務局長説明要旨

  1. 新ラウンド立ち上げへの期待
  2. CSIは、第4回閣僚会議において包括的な新ラウンドを立ち上げる必要性を、十分認識している。その結果、サービス貿易自由化交渉も進展すると期待している。
    包括的な新ラウンドの立ち上げを実現するためには、日本やEUは投資や競争についてあまり野心的な協定を目指すべきでない。一方で米国も、アンチダンピング等について、少なくとも交渉のテーブルにつく姿勢を見せる必要がある。
    米国は自由貿易協定の締結による地域・二国間の貿易自由化にも関心を示しているが、産業界は多国間のプロセスも重視しており、自由貿易協定とWTOにおける包括的なラウンド交渉とは両立できるものと考えている。
    新ラウンドの立ち上げが成功するかどうかは、7月頃までに、目処がつくであろう。仮に包括的なラウンドが無理な場合は、達成可能なプログラムを組み直すことで閣僚会議の決裂を未然に防止する必要がある。

  3. サービス交渉に関するルールメーキング
  4. 2000年2月のサービス交渉開始以来、交渉の枠組作りが行われてきた。その中で、セーフガードについてはルールを作成する必要がないと考えている。サービスに関する統計が未整備な現状では、どのような条件でセーフガードを発動し得るのか明らかでない。途上国がセーフガードの導入を強く求めていることは承知しているが、これを導入すれば逆に先進国側に保護主義的な措置を取る口実を与えてしまう。
    他方、国内規制の透明性は大変重視している。国内規制の透明性に関して分野横断的なルールを策定し、一定程度の国の参加(クリティカル・マス)を実現できれば、大きな成果といえよう。この点については、日米欧の政府・産業界が連携して取り組む必要がある。

  5. 途上国への配慮
  6. 途上国はサービス交渉を含め、更なる交渉を行うことに消極的である。そこで、途上国にとってサービス貿易自由化のインセンティブとなるような支援パッケージを提供するよう、政府に働きかけをすることが重要であろう。

  7. 今後の展望
  8. 今後、日本、米国、EU等が提出している交渉提案について、交渉推進のベースとなり得るものか精査した上で、本格交渉に入ることとなる。サービス交渉が農業交渉のスピードに左右されることなく進展することに期待している。


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