経団連くりっぷ No.147 (2001年5月10日)

日本・インドネシア経済委員会(委員長 上島重二氏)/3月28日

最近のインドネシア情勢および世銀の支援について

−マーク・ベアード世銀インドネシア局長よりきく


世界銀行ジャカルタ事務所に駐在しているマーク・ベアード・インドネシア局長の来日に際し、本年2月に公表された世銀のインドネシア国別援助計画(CAS: Country Assistance Strategy)の概要、最近のインドネシア情勢および今後の展望、さらには世銀の今後の支援内容などについて、説明をきいた。

○ ベアード局長説明要旨

世銀では、本年2月にインドネシアのCASを策定した。これは、向こう3年間の予測を立てた上で、インドネシアを援助する最善の方策を模索した結果である。政治的な問題ばかりが取り上げられがちだが、中長期的な観点からインドネシアを見ることが重要である。

インドネシア経済は、過去2年を見る限り、予想よりもよい結果となった。インドネシアは、東アジアで最も危機の打撃を受けたが、2000年の経済成長率は4.8%まで回復している。インフレ率も一時は80%程度まで上昇したが、10%以下に落ち着いている。経常収支も黒字となっている。ただし、海外からの投資が依然危機前の水準に戻っていない。これは、政治情勢、治安、経済改革の遅延などによるとされている。

世銀の想定するベース・ケース(最もありうるシナリオ)では、向こう3年、経済成長率は4%程度で推移するが、危機前の一人当たりの所得水準を回復するには十分とはいえない。インフレは、10%以下に維持されるだろう。政府債務の対GDP比率は、現在100%であるが、2003年までに90%以下となると予想している。希望的観測に基づくハイ・ケースでは、5〜6%の経済成長、5〜6%のインフレ率、政府債務の対GDP比率は80%以下としている。重要なのは、経済改革であり、特に銀行・企業部門のリストラが鍵となる。そのためには、IMFの経済改革プログラムが重要である。IMFプログラムは、市場に対するベンチマークとなっている。プログラムが実施され、銀行・企業部門のリストラが進めば、5〜6%の経済成長も可能である。

世銀は、ベース・ケースの場合、年額4億ドルの融資を行う。これは世銀とインドネシア政府との同意に基づく。現状では、多額の借入れはかえって負担となる。増額するためには、IMFプログラムが軌道に乗ることが前提となる。政府が公的資源をしっかり管理することも必要である。地方分権化が進む中で、汚職・腐敗を防止し、全国的な予算管理の必要性が生じている。また、貧困対策、基礎インフラ整備、農村開発などに世銀の融資が向けられることが重要である。

危機を未然に防ぐことが最も重要であり、世銀もその点に注力している。CASの取りまとめは、関係者による長い議論を重ねてきた結果である。世銀は、インドネシアの長期的パートナーとしてコミットしていることを強調したい。


くりっぷ No.147 目次日本語のホームページ