ベンチャー企業の動向と課題に関する懇談会(司会 立花常務理事)/4月6日
新産業・新事業委員会では、新産業・新事業創出、育成に取り組んでいるが、その一環としてベンチャ−企業の動向と課題に関する懇談会を開催し、日本政策投資銀行の丹野光明 新規事業部長より、ベンチャー企業の動向やベンチャー企業と大企業との連携等について説明をきくとともに懇談した。
第3次ベンチャーブームが1994年頃から続いている。これまでのブームとは違い、政府、産業界、大学による集中的な支援策を背景に、永続的な社会運動としてベンチャーが定着しつつある。中でも、資金調達の環境が抜本的に改正され、1999年12月には東証のマザーズ、昨年6月には、ナスダックジャパンができた。しかし、昨年末から続いているネットバブルの崩壊に加え、株式市場の低迷により、ベンチャー企業の環境は厳しくなっているのも事実である。
行政による支援策は整備されてきたものの、ベンチャーに乗り出す起業家は依然として少ない。しかし、金融機関の再編成や大企業のリストラに伴い、学生や若者の意識も変化しつつあり、ベンチャー企業の予備軍は着実に増加している。
ベンチャー企業と大企業との連携は、昔からその必要性が指摘されていたにもかかわらず、目にみえた形では進展していない。しかし、徐々に変化の兆しが出ている。
例えば、今まで大企業は、中央研究所などにおいて、自前で技術や新規事業の開発研究を行ってきた。しかし、最近のように変化が激しく、先の読めない時代には、単独の事業シーズによる事業展開が難しくなっており、また大企業は機動性を欠く。したがって従来以上にベンチャー企業と連携し、その力を活かすことが重要になりつつある。
さらに、大企業が経営資源の選択と集中を進める中で、整理する事業部門を独立させるとともに、社内に埋もれた技術を社内ベンチャーや社員のスピンアウトなどの方法で活用する動きも出てきている。社外で行われる事業であっても、良好な関係であればネットワーク的に活用でき、大企業にとってもメリットがある。
大企業では、研究、奨学寄付金、企業研究者の大学研究室への派遣などの方法によって、大学の技術を活用している。その場合、企業と大学の教授との接触は、個人レベルの関係に基づくケースが目立つ。
しかし、今後、産学協同や企業への技術移転は、技術移転機関(TLO)等を通じて行われることが期待される。TLOの権利の還元が透明になる。
また、国立大学教員等の株式会社役員就任が認められ、本年4月から、国立の研究所が独立行政法人化するため、論文中心の大学は、特許等を意識したものへと変わり、将来、アメリカのように大学発のベンチャー企業が増加することが望まれる。
日本でこれまで、大企業とベンチャー企業の連携がうまくいかなかった理由として、ベンチャー企業の技術レベルが高くないことが指摘されている。しかし、大学発のベンチャー企業の増加によって、ベンチャー企業の技術レベルも向上し、大企業とベンチャー企業の連携の大きな軸になることが期待される。