経団連くりっぷ No.148 (2001年5月24日)

なびげーたー

企業を再び途上国援助(ODA)の担い手に

国際協力本部長 工藤高史


途上国に日本の支援の賜と感謝され、納税者たる日本の国民が納得のゆくよう1兆4千億円のODA予算をいかに使うか。改めて援助政策の改革を訴える。

  1. さる4月に発表されたOECDのDAC(開発援助委員会)の統計によれば、2000年におけるわが国の途上国に対する援助額は130億ドルであり、96億ドルの米国を抑えて首位を保ち、10年連続世界一となった。財政の厳しい中でODA予算が然るべく措置されているのは、世界第二位の経済大国としての国際的責務に加えて、軍事力を持たないわが国にとって、ODAが外交政策を展開するうえで重要なツールであるからに他ならない。そのODAが、果たして途上国に評価され、日本の国民の理解が得られているのか。

  2. 近年、ODAのアンタイド化が進み、わが国企業が手がける援助案件が減少している。これに伴って、援助資金は日本から供与されたものの、工事の担い手が他国の企業であるために、途上国の国民の眼には、日本の援助案件だと認識されにくい状況が生じつつある。従って、途上国にとって、日本の援助であるにもかかわらず、どこの援助か「顔」が見えにくくなっている。
    一方、アンタイド化の流れの中で、企業の援助離れが進み、途上国にとって時宜を得た良い案件の発掘・形成に弊害が生じているといっても過言ではない。

  3. そもそも援助は、相手国の経済開発計画を勘案して供与国が援助プログラムを企画・立案し、相手国に提示する。相手国の同意のもとで、そのプログラムに供与国が資金を用意し供与国の担い手が実施するのが自然なあり方である。途上国にとっても、どこの国の援助か理解しやすい。途上国に理解され評価されることによって、タックスペイヤーたる供与国の国民も納得することになる。

  4. こうした観点から経団連では、相手国の要請主義に固執しアンタイドの原則を堅持する日本政府に対して、政策の転換を強く求めてきた。その関連で、わが国企業の技術と経験が生かせる分野(例えば環境など)に絞ってODAを実施すべきこと、ジャパンタイドの特別円借款を3年間に限定せずに恒常化し、今後の援助の重要な柱として位置づけるべきこと等を訴えた経緯がある。
    ODAが外交政策上の重要なツールであるならば、戦略性をもたねばならない

  5. 昨今、多くのNGOが援助の担い手として新たに登場し、企業が担えない領域をカバーしている。こうした民間の活力をODAに積極的に活用していくことも、日本の「顔」をよみがえらせることになろう。
    折しも、外務大臣の諮問機関として、第2次ODA改革懇談会が始まる。原点に立返って、途上国に感謝され、日本の国民の納得のゆくODAとすべく、大胆な改革案が打出されることを期待したい。


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