経団連くりっぷ No.148 (2001年5月24日)

米国の安全保障貿易管理制度に関する懇談会/4月27日

米国における新たな輸出管理法の制定に向けた動き


経団連では、わが国の安全保障貿易管理制度を、欧米の規制体系をも参考にしながら、より透明で企業負担の小さいものとすべく規制の緩和に向けた働きかけを行っている。その一環として、米国弁護士のジェフリー・スナイダー氏より、米国の輸出管理システムの現状と今後の展望について話をきいた。

○ ジェフリー・スナイダー氏説明要旨

  1. 新たな輸出管理法案
  2. 米国の輸出管理システムが達成すべき課題は、どのように輸出と安全保障のバランスを取るかということである。
    現在、2001年輸出管理法案(S149)が上院に提出され、議論が行われているが、この法案は、汎用技術に関する例外範囲の拡大等、全般的に輸出管理に関する規制を自由化する内容となっている。この法案が議会を通過して正式の法律となれば、米国の輸出企業にとっては負担が軽減され、非常に望ましい。
    ブッシュ政権は、S149に対する支持を表明している。しかし、海南島での米国機と中国機の衝突事故等によって、米国議会においては、中国問題に対する注目が高まっており、こうした政治的な問題等により、議会での審議の進捗が遅れる懸念もある。
    中国問題に関して、これまでブッシュ政権は、きわめて強硬な態度で対応しているが、米国の輸出管理システムにとっては今後も重要な問題であり続けるだろう。

  3. 米国の輸出管理規制と産業界の対応
  4. 米国の輸出管理規制システムは、非常に複雑であり、多くの問題を提起している。
    まず、再輸出規制は、域外適用される可能性が高く、米国から技術を輸入している日本を始めとする外国企業にとっては非常に負担が大きい。多くの日本企業は、米国商務省に対して改善を働きかけてきたが、いまだに実現していない。
    次に、見なし輸出規制は、米国において雇われている外国人に対して技術が移転される場合に適用される。また、見なし再輸出規制は、すでに外国に移転された技術が当該外国において雇われている第三国人に対して移転される場合に適用される。
    米国の産業界は、こうした複雑な規制に対して、国境を越える社内の技術移転を輸出管理法の適用除外とすること等の規制緩和を働きかけている。S149が原案のまま法律となれば、こうした問題のいくつかは解決されることとなる。

  5. 今後の展望
  6. 全般的に規制が緩和されることによって、残った規制の執行は厳しくなるだろう。S149では、刑事制裁の導入や民事上の罰則金の上限の引き上げ(1万1,000ドルから50万ドルへ)等の罰則の強化が盛り込まれている。
    また、ワッセナー協定を始めとする国際的な輸出管理体制の強化に向けた動きもある。


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