経団連・アジア開発銀行(ADB)共催セミナー/4月20日
経団連では4月20日にアジア開発銀行(ADB)との共催で、アジア主要国の経済見通し、メコン河流域開発(GMS)の近況ならびに中央アジア諸国の経済の現状と将来展望に関するセミナーを開催した。当日は約90名が参加し、上島副会長の開会挨拶に引き続き、ミョン・ホー・シンADB西地域担当副総裁が挨拶した。その後、ADBの各専門家からそれぞれのテーマに従って説明があった。
ADBは4月19日、「2001年アジア開発展望」を発表した。2000年のアジア経済は輸出の伸びなどにより、前半は好調であった。後半に入り、米国経済の減速による輸出減の影響も受けたが、アジア途上国全体では7.1%の成長を達成した。2001年は米国の需要減速やITブームの沈静化などにより、5.3%の成長に低下すると見込んでいる。2000年の実績と比較すると低いが、世界の中では依然として最も高い成長率である。なお、2002年には再び持ち直して、6%程度の成長になると予測している。
アジア全体では高い成長率が見込まれるものの、地域によりかなりのばらつきがある。NIES(韓国、香港、台湾、シンガポール)は、2000年の8.4%の成長から、2001年には輸出の大幅な鈍化などで、特に韓国の成長が大幅に落ち込み、4.3%の成長に留まると見られる。
中央アジア諸国については、ロシア経済の回復や原油価格の上昇により2000年は7.8%の成長を達成したが、2001年は輸出の伸び悩みで3.3%の成長に留まるだろう。
中国は2000年〜2002年にかけて、7〜8%の高い経済成長率を維持するだろう。輸出依存度が低く、内需が強いため、米国経済の影響がそれほど大きくないこと、またWTO加盟によるプラス要因が見込まれることなどから、経済的には大きな問題のない国だといえる。
東南アジア諸国は、内需が引き続き低迷し、公的債務も増加するため、2001年の成長率は4%に留まる見通しである。
南アジアは門戸開放策に転じた成果が出ており、中国と並んで見通しは非常に明るい。インドはIT産業の台頭などで、2001〜2002年は6〜7%の成長が期待できる。
「2001年アジア開発展望」では、グローバリゼーションがアジアの途上国に与える影響についても考察している。アジア全体としては、グローバリゼーションが経済成長を拡大してきた。しかし、貧困層が打撃を受ける面もあり、この問題への対処や、短期の外国資本流入にいかに対応するかが今後の課題となろう。
GMSプログラムは、メコン河流域の5ヵ国と1地域(カンボジア、ラオス、ミャンマー、タイ、ベトナム、中国雲南省)にまたがる総合開発プログラムであり、1992年にスタートした。プログラムは運輸、通信、電力、環境、人材育成、貿易、投資、観光の8つのセクターをカバーしており、
中央アジア諸国(アゼルバイジャン、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタン)は、最近になってADBに加盟した国々である。原油価格の上昇や、ロシア経済の回復で2000年は高い(7.8%)経済成長を遂げたが、2001年は原油価格の下落、外国投資の伸び悩みなどが予想され、経済成長は低い伸び(3.3%)に留まるだろう。中央アジア諸国の市場規模は小さく、スケール・メリットを享受するためにも、また水資源、環境問題に取り組むためにも地域内の協力が必要であり、ADBとして積極的に域内協力体制の推進を図っている。各国ごとのばらつきはあるが、貧困問題(タジキスタン、キルギスでは全人口の60%以上が貧困層)やガバナンス・システムの未整備(民間企業の未発達、契約に関する法律の未整備)もあり、貧困層に焦点を当てた取組みや金融リストラ含めた構造改革、地域内外との協力が今後ますます不可欠である。