経団連くりっぷ No.148 (2001年5月24日)

社会貢献担当者懇談会−社会基盤整備(共同座長 加藤種男氏)/4月27日

日本の企業財団が直面している課題

−助成財団センター 浅村専務理事よりきく


企業の社会貢献活動の重要な一翼を担うのが企業財団である。活動の実効性を一層高めようとの観点から、企業と企業財団の効果的な連携のあり方を探る動きが出てきている。そこで、当懇談会では、(財)助成財団センターの浅村裕専務理事より財団が抱える課題について説明をきいた。

○ 浅村専務理事説明要旨

法律上の定義はないが、民法第34条に規定された「財団法人」のうち、資金助成を主な事業とするものを「助成財団」と称している。助成財団の上位100財団の60%が企業や経営者が出捐して設立した企業財団であることから、当センターが実施する助成財団に対するアンケート調査結果は企業財団の現状を知るうえで参考になろう。

  1. 日本の助成財団の現状
  2. 調査対象608財団の2000年度末の資産合計は約1兆3,000億円で、資産規模10億円未満の小型財団が54%を占めている。100億円以上の大型財団は22財団で4%に過ぎない。日米の上位20財団の資産規模を比較すると日米間には約28倍の開きがある。
    また、年間の助成額が5,000万円未満の財団が76%を占め、日本の608財団の年間助成合計額は約476億円で、フォード財団単独の年間助成額約563億円にも及ばない。助成内容は、研究助成や招聘をはじめとする研究関連が圧倒的に多く、分野的には「科学・技術」「医療・保険」に集中している。

  3. 当面の課題
    1. 1990年度当時558億円であった国の科学研究費補助金(科研費)はその後大幅に増額され、2000年度では1,419億円となっている。民間の研究助成は毎年約100億円程度で、創設当初は画期的な助成金として高い評価を得ていたが、今では国の補助的な役割を担うような状態になってしまった。今後、今までの研究助成から発想を変えた取組みが求められている。

    2. 近年NPOやNGOからの資金援助の要請が増加している。多くの財団が科学技術を中心とする研究助成に力を入れているため、これらの社会の新しいニーズに対応できずにいる。縦割り行政の中での主務官庁制度により、活動内容の変更も難しい。今後、公益増進のために、財団とNPOやNGOの連携はますます重要で意見交換やネットワークづくりを進めている。

    3. 低金利が続く中、基本財産の運用益が大幅に減少し、出捐企業が寄付しない限り事業の維持・継続は困難になっている。国からの行政指導で、基本財産の管理を「安全、確実な方法」で行うことが求められているが、厳しい金融環境のもとでの事業の継続のためには「財団資産の管理」から「財団資産の運用」への考え方への転換が必要である。


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