経団連くりっぷ No.149 (2001年6月14日)

なびげーたー

事務総長に就任して

事務総長 和田龍幸


5月25日の定時総会において新たに事務総長に任命された。団体の事務局運営という任務のほかに新団体設立への準備という仕事が付け加わっている点が、従来の例と異なっている。

  1. 創立以来55年の経団連の歴史を振り返ると、四つの大きな変革を経てきた。
    第1は、オイルショックである。これを機に政党、官庁、海外との折衝が一挙に拡大し、現在の事務局体制の原型が出来上がった。
    第2は、1993年の政治資金斡旋の中止である。いわゆる55年体制の下で、良きにつけ悪しにつけ、一体感のあった政治との関係が見直された。反面、このことから主義主張で立場を鮮明にすることが求められる結果になった。
    第3は、バブル現象を一つの契機として、政策立案のウエイトが官から政治へと微妙にシフトし、経済の市場現場でのプレーヤーの集まりである経団連の見解を求められるケースが急増したことである。
    第4は、日経連との統合による新団体の設立である。

  2. 経団連事務局は大きな変化に直面するごとに、会員ニーズに対応すべく組織、機能の改善に努力してきた。すでに、団体統合の理念は提示されているが、第4の変革に際して日常的な機能として期待されるものは何なのであろうか。

    (1) 政治力のパワーアップ
    政党、政府に対し内外の環境変化に即応した諸制度が整備されるよう改革を求め、実現するのが経済団体の役目である。その際、視点がよりグローバルに、より広い地域へ、より多くの企業、従業員に向けば、政策要求の範囲は広がり、より強い政治力、折衝力が求められる。選挙制度、政治資金問題も避けて通れない。

    (2) 地球環境保全への自己努力
    経団連の環境自主行動計画は、わが国CO2排出量の全体の80%弱をカバーするほど包括的である。官による規制に依存することなく自己責任で対応するという認識の広がりが求められる。

    (3) シンクタンク機能
    1,000万人近くに達すると予想される従業員をかかえる団体は、新技術、新産業のシーズの巨大な宝庫でもあり、その宝庫を開き、民の潜在能力を引き出す知恵が求められる。

    (4) NPOのパートナー
    NPOは政府活動の隙間を埋めるものではない。企業市民を動員して社会そのものを変える強力なインターミディアリーとして活動の充実が求められる。

    (5) 民間外交の深化
    グローバル時代の日本を支えるため、民間としてさらに汗をかくことが求められる。

  3. 以上の例は体系のない全くの私見であるが、いずれにせよ、新たな機能を果たしうる事務局へ、否応なしに脱皮すべき時期がそこに迫っている。


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