経団連くりっぷ No.149 (2001年6月14日)

輸送委員会(共同委員長 常盤文克氏、三浦 昭氏)/5月18日

港湾整備の課題と今年度の施策の展開

−国土交通省港湾局 川島局長よりきく


わが国産業の国際競争力強化の観点から、港湾は貿易のゲートウェイとしてのみならず、物流の結節点として、その効率的な整備と運営が求められている。そこで、輸送委員会では、国土交通省港湾局の川島毅局長を招き、「港湾整備の課題と今年度の施策の展開」について説明をきくとともに意見交換を行った。

  1. 川島局長説明要旨
    1. 国土交通省における港湾行政
    2. 港湾行政については、昨年3月の港湾法改正に伴い、港湾整備の重点化や、国と地方の役割の明確化、港湾相互間の連携などに取り組んでいる。また、21世紀の港湾行政をいかに進めていくかという観点から、港湾新生の道筋と未来の港づくりのあり方を示した「新世紀港湾ビジョン」を策定している。

    3. 港湾行政の課題と政策の展開
    4. 1997年4月に策定された総合物流施策大綱においては、

      1. アジア太平洋地域で最も利便性が高く魅力的なサービスの提供、
      2. 産業立地競争力の阻害要因とならない物流コストの実現、
      3. 環境負荷の軽減、
      を掲げている。
      このため、国際海上コンテナターミナルや多目的ターミナル等の拠点的整備を進めているほか、規制緩和や輸出入・港湾諸手続きのワンストップサービスなどに取り組んできた。
      こうした施策の展開を通じて、輸出入コンテナ貨物にかかる陸上輸送コストを21世紀初頭に約3割削減するとともに、輸入コンテナ貨物滞留期間を4〜5日から2001年には2日程度に短縮することを目標としており、今後とも、関係者の協力を得つつ取り組んでいきたい。
      とりわけ、海上保安庁や他の関係機関と連携をとりながら推進している「海上ハイウェイネットワーク」の構築は、マイナス15mの大水深コンテナターミナルや国際幹線航路の整備などハード面での施策と、「海のITS(高度道路交通システム)」と呼ばれる港湾情報システムの整備などソフト面での施策を一体的に推進することにより、海上輸送の効率化を図ろうとするものである。
      また、マルチモーダル交通体系を整備するうえからは、港湾と内陸道路網の連絡が重要である。現在、港湾から自動車専用道路インターチェンジに10分以内で連絡できる割合は、フェリー港湾では38%に過ぎず、今後、道路局とも連携しながら、物流結節点の整備に努めていきたい。
      一方、ソフト面では、2001年度中に、財務省のSea-NACCS(海上貨物通関情報処理システム)と国土交通省の港湾EDIシステム(港湾管理者・港長に係る入出港の行政手続きの電子データを交換するシステム)を接続することにより、港湾諸手続のワンストップサービスを実現させたいと考えている。加えて、規制緩和を中心とする港運構造改革の推進を通じて、港湾荷役の24時間フルオープン化に向けて取り組む。

    5. 新たな施策の展開
    6. 今後、港湾ユーザー等と連携しつつ、以下の3つの施策を推進することとしている。

      1. 総合リサイクル物流ネットワークの構築
        家電リサイクル法等の施行に伴い、2008年には、廃棄物の運搬・処理を担う、いわゆる静脈物流が40兆円の市場に拡大することから、循環型経済社会への転換を図るべく、リサイクル処理の広域化等、全国ネットワークを構築することが必要である。このため、全国の各拠点にリサイクルポートを設けるなど、港湾を静脈物流・リサイクル産業の拠点にしていきたい。

      2. 都市の再生に向けたプロジェクトの推進
        本年4月に発表された政府の緊急経済対策の実施に向けて、都市再生本部と連携しつつ、臨海部未利用地の活用や、災害に強い臨海都市部の整備など、具体的なプロジェクトを推進していきたい。
        とりわけ、従来、運輸省港湾局と建設省都市局とに分かれていたものが国土交通省として一体となったメリットを活かし、大阪市の此花西部臨海地区など全国約10地区でみなとづくり(港湾関連事業)とまちづくり(都市関連事業)を連携させ、効率的な事業の推進を図りたい。

      3. 港湾ビジネスへの民間事業者の参画
        港湾運営の効率化を実現し、民間企業参入機会を増大させるため、中核中枢国際港湾のコンテナターミナルの荷捌き施設などを対象としてPFI方式を導入し、公共コンテナターミナル等に民間の経営ノウハウや資金を活用していきたい。

  2. 意見交換(要旨)
  3. 経団連側:
    モーダルシフトの促進に当たっては、港湾と道路だけでなく、貨物鉄道の整備も視野に入れるべきである。
    川島局長:
    現在、国土交通省では関係各局が連携して、鉄道、港湾、道路、空港等のインフラを総合的に捉え、モーダルシフトに取り組んでいる。

    経団連側:
    港湾整備を進めても、そのコストが利用者料金等に転嫁されるのであれば、産業競争力強化にはつながらない。トータルコストを厳しく算定し、無駄な投資を減らすべきである。
    川島局長:
    国土交通省では、全ての政策に係るトータルコストを評価するため、新しい政策評価システムを導入した。過大な投資が行われないよう配慮したい。

    経団連側:
    シンガポールや韓国などアジア諸国の港湾整備が進む中で、わが国の港湾をどのように位置付けるべきか。
    川島局長:
    アジアの国際ハブ港湾機能については、北東アジアの関係局長会議でも議論されている。トランシップ(積替輸送)が大半であるシンガポールなどと異なり、わが国の主要港湾は巨大な市場を背後に抱えており、第一義的には日本発着の貨物を取り扱う港湾であると認識している。

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