経団連くりっぷ No.149 (2001年6月14日)

貿易投資委員会総合政策部会(部会長 團野廣一氏)/5月23日

WTO新ラウンドに関する交渉の対象と内容

−経済産業省通商政策局通商機構部 中富参事官よりきく


11月のWTOカタール閣僚会議に向けた最近の動きと交渉対象項目となりうる事項の議論の焦点について、経済産業省通商政策局通商機構部の中富道隆参事官より説明をきいた。

○ 中富参事官説明要旨

  1. 新たな動き
  2. シアトル閣僚会議後、昨年一年間は途上国への配慮から実施問題に議論が終始し、ラウンド立ち上げに関する議論は特段の進展が見られなかったが、最近この流れに以下のような変化が生じている。

    1. WTO一般理事会では、5月3日より閣僚会議の論点項目を掲載したチェックリストに基づき、実質的議論を開始した。7月末までに「リアリティ・チェック」を完成させることを目指している。
    2. 米国が通商政策基本方針を打ち出し、そのなかでWTO新ラウンドを支持する旨を明らかにした。
    3. OECD閣僚会議において、WTOドーハ閣僚会議で新ラウンドを立ち上げることを大臣が合意した。
    4. 四極貿易大臣会合が2年ぶりに開催され、四極でラウンド立ち上げに向けて連携していくことを確認した。
    5. ラミー欧州委員とゼーリックUSTR(米国通商代表部)代表が会談を行う等、ラウンド立ち上げの鍵を握る欧米の関係が好ましい方向に動いている。

  3. 今後の課題
  4. ラウンド立ち上げに向けた動きが本格化しているものの、

    1. 途上国は、UR(ウルグアイ・ラウンド)で行った約束の実施が困難な状況にある、
    2. 米国はマルチよりもFTA(自由貿易協定)を重視している、
    3. BIA(ビルトイン・アジェンダ)に既に米国の最重要関心分野が含まれている、
    4. 全世界的にFTA締結の動きが活発化している、
    5. 過去2年間、四極の連携が見られなかった、
    等の課題が存在している。これらの課題に取り組んでいくことが不可欠である。

  5. 主な対象項目
  6. BIAに加えどれだけの項目を交渉の対象とするかについては、加盟国間で意見の隔たりがあるが、主なものは以下の通りである。

    1. アンチダンピング:
      米国は、ADの規律見直しに強い懸念を示している。EUは積極的ではないものの、交渉アジェンダにすること自体は反対していない。

    2. 投資:
      WTOで投資に関する規律を策定する場合、ポートフォリオを含まない直接投資のみが対象になる。態度を明らかにしていない米国、強く反対するインド、マレーシア、インドネシア等をいかに説得していくかが鍵である。

    3. 環境:
      EUが予防原則を取り上げるよう主張している。

    4. 電子商取引:
      いかなる内容が交渉のないようになるかまだ分からないものの、各国の関心は高く、交渉項目の一つとして注目される。


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