経団連くりっぷ No.150 (2001年6月28日)

なびげーたー

港湾のワンストップサービスの実現に向けて

産業本部長 林 正


わが国の煩雑な輸出入・港湾諸手続を抜本的に見直し、ワンストップサービスによる物流・商流の円滑化を通じて産業競争力の強化を図るべきである。

港湾は、わが国経済・産業を支える貿易の拠点として重要な役割を担っている。内外の利用者にとって利便性の高い港湾をハード・ソフト両面で整備することは、貿易立国としての国際的な責務でもある。しかし、わが国の港湾では煩雑な手続によって利用者が多大な時間的・経済的コストを強いられている。このため、物流・商流の円滑化が阻害され、産業全体の競争力にも悪影響を及ぼしている。

一方、国を挙げて産業競争力の強化に取り組んでいるシンガポールや韓国では、港湾における国際物流の情報化を推進し、利便性に優れた港湾サービスを提供している。

わが国でも、「総合物流施策大綱」(1997年4月閣議決定)において、既に「国及び地方公共団体が輸出入、出入港等の行政手続において率先して情報化によるペーパーレス化及びワンストップサービスの実現に取組む」旨の方針が示されており、財務省と国土交通省では、それぞれのシステムを2001年度中に接続し、共通の入出港手続について、同一の回線・端末を使用して1回の入力で各行政機関への手続を行えるようにするとしている。

しかし、輸出入・港湾諸手続のうち、電子化されている手続は一部に過ぎず、電子申請が認められている部分はシステム間で統一されていない。このため、利用者はシステム毎に複数回、入力・送信することを強いられているのが実態である。

このように、グランドデザインを欠いたまま、各省庁が独自にシステム化を進めている現状を憂慮し、経団連は、今般、政府に対して、電子政府化の目標となっている2003年度までに、輸出入・港湾諸手続のワンストップサービスを実現し、入港から輸入許可までに要する時間を現在の3〜4日から、最短で、シンガポールや豪州並みの24時間以内に短縮することを提言した。

この目標を達成するために、政府は、現行の書類フォーマットの統一・集約化などを通じて徹底したペーパーレス化を実現した上で、全ての輸出入・港湾諸手続を統合し、1回の入力・送信によって複数の申請を可能とするシングルウィンドウシステムを整備することが求められる。

また、そのためのアクションプランとして、

  1. 官公庁横断の検討会議を内閣に設置し、システムのあり方や必要な法制度の整備などにつき、2001年12月までに結論を得る、
  2. 神戸港をパイロット事業と位置付け、2002年度中に、輸出入・港湾諸手続に係る省庁のシステムと、神戸市の神戸港港湾管理者EDI(電子データ交換)システムを統合し、全国のモデル港とする、
ことを提案している。

本件については、既に6月26日、政府のIT戦略本部において、小泉首相や竹中IT担当大臣等に対して岸副会長・情報通信委員長よりご説明頂いた。経団連としては、引き続き、政府に対し、輸出入・港湾諸手続のワンストップサービスの実現を強く働きかけていきたいと考えている。


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