経団連くりっぷ No.150 (2001年6月28日)

貿易投資委員会(委員長 槙原 稔氏)/6月1日

WTO新ラウンド交渉立ち上げに向け、機運高まる

−経済産業省 今野経済産業審議官よりきく


貿易投資委員会は、総合政策部会で検討してきた、提言「戦略的な通商政策の策定と実施を求める〜「通商立国」日本のグランドデザイン〜」(案)の審議を行った。当日は、同審議にあわせて、経済産業省の今野秀洋経済産業審議官より、WTO新ラウンド交渉に向けた最近の動き、わが国の自由貿易協定への取組み、セーフガードに対する考え方等をきいた。

○ 今野審議官説明要旨

  1. WTO新ラウンド交渉に向けて
  2. WTO新ラウンド交渉が、本年秋のドーハ閣僚会議において成功裏に立ち上がるためには、米国新政権の協力、発展途上国の説得が不可欠である。
    こうした中、5月16日〜17日に開催されたOECD閣僚理事会のコミュニケにおいて、包括的なWTO新ラウンド交渉の立ち上げに合意した。また、日・米・EU・カナダの四極貿易担当大臣会合も開催され、先進国が協力して発展途上国に働き掛けていくことで合意した。
    米国政府は、上院において民主党が多数党になるなか、議会からTPA(大統領通商促進権限)を得るための交渉をしなくてはならない。米国の経済界を中心に、新ラウンド立ち上げに向けた働きかけを強めていくことが重要である。
    今後、6月6日〜7日のAPEC貿易担当大臣会合、7月20日の主要国首脳会議(サミット)を経て、7月末に、WTOのムーア事務局長は、新ラウンド交渉の立ち上げが可能かどうかのリアリティ・テストをしたいと言っている。現在までの趨勢では、新ラウンドは立ち上がると考えている。

  3. 自由貿易協定(FTA)をめぐる動き
  4. わが国にとって初めてとなるシンガポールとのFTAは、年内の締結に向けて順調に交渉が進んでいる。韓国とのFTAは、日韓FTAビジネス・フォーラムが設置され、それぞれ両国で検討が進んでいる。メキシコとのFTAは、フォックス大統領の来日にあわせて、政府間の検討会が設置されることになるだろう。
    ASEAN+日中韓のFTAは、短期的には難しい。米国とのFTAは、両国にとってプラスになるが、二国間交渉よりも、WTO等のマルチの場を使って通商問題を扱う方が望ましいかもしれない。

  5. セーフガードについて
  6. 4月に暫定セーフガード措置を発動したネギ、生シイタケ、畳表については、主な輸入先である中国が、報復措置の可能性も示唆しながら、強く反発している。
    セーフガードは、輸入の急増により、国内産業に重大な損害が生じる場合に、緊急避難措置として、調整を容易にするための必要な限度において、発動すべきであろう。


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