経団連くりっぷ No.150 (2001年6月28日)

貿易投資委員会総合政策部会(部会長 團野廣一氏)/6月6日

WTO新ラウンド交渉立ち上げに向け、
産業界は積極的に働き掛けるべき


貿易投資委員会総合政策部会では、WTO新ラウンド交渉の立ち上げに向けた産業界の基本的立場について具体的な検討を開始した。その一環として、東京大学の小寺彰教授より、WTO新ラウンド交渉への対処のあり方について話をきいた。

○ 小寺教授説明要旨

  1. 新ラウンド交渉に向けた基本的視点
  2. WTO新ラウンド交渉は、短期的には、国外における市場アクセスの拡大、国内における構造改革の推進、長期的には、WTO体制の維持・発展という利益をもたらす。
    産業界は、ビジネスの現実を知っているという強みを活かして、政府間交渉に積極的に貢献すべきである。他方、WTOによってルールができれば、すべてが解決するような幻想をもつべきではない。
    自由貿易協定が世界的に拡大しているなか、WTOの魅力を高めれば、日本の国際競争力を高めることにもつながる。

  3. 個別項目
    1. アンチダンピング(AD):
      近年、保護主義的なADの発動が濫発している。特に、途上国の多くは、明確にAD協定に違反するような発動を繰り返している。ADルールの規律が強化されれば、日本としては望ましい。また同時に、途上国に対して、ルールを遵守できるようにキャパシティ・ビルディングを行っていく必要があるだろう。

    2. サービス貿易:
      ウルグアイ・ラウンド合意によってできたGATS(サービス貿易一般協定)という枠組みに基づき、さらなる自由化が進められるのではないか。

    3. 農業:
      関税引き下げと補助金の削減が焦点になるだろう。

    4. 鉱工業品関税:
      途上国を中心として関税引き下げを目指すべきである。

    5. 投資:
      日本にとっては、WTOにおいて、国際的な投資ルールが整備されれば望ましい。アジアを中心とする途上国が参加できるように、漸進的に自由化を進められる枠組みを構築する必要があるだろう。

    6. 電子商取引:
      国際的にルールのハーモナイゼーションを進めるべきであろう。

    7. その他:
      競争政策、労働、環境については、WTOで扱うべきかについて加盟国間で対立がある。

  4. 今後の展望
  5. 新ラウンド交渉開始の見通しは立った。他方、項目によって妥結期限が異なったり、加盟国のすべてが参加しない複数国間協定になる等、結果は多様になる可能性が高い。
    今後、新ラウンド交渉の立ち上げだけでなく、WTOの長期的な発展のためには、日米欧の連携、発展途上国の説得、NGOへの対応がきわめて重要である。
    また、国境を越えた民間産業界の連携の重要性も高まっている。


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