経団連くりっぷ No.152 (2001年7月26日)

なびげーたー

目標設定型社会から試行錯誤型社会へ

社会本部長 中村典夫


今後50年を展望すると、従来の目標設定型の社会から試行錯誤型の社会、多様性に富んだ社会に移行し、NGOがこれまで以上に重要な役割を果たす。

  1. NGOの役割の増大
  2. 7月12日から14日まで、御殿場の経団連ゲストハウスにおいて、今井会長はじめ経団連首脳が参加し、第16回東富士フォーラムを開催した。21世紀初めてのフォーラムであり、「21世紀の地球と日本」をメインテーマとして、「次世代への地球の継承」、「今後50年の日本の目標」等について討議した。
    「今後50年の日本の目標」では、北岡伸一東京大学法学部教授と伊藤元重東京大学大学院経済学研究科教授から、今後の方向についての考えをきき、それらを踏まえて議論を行った。
    北岡教授からは、

    1. 国家はNGOのチャレンジを受けているが、今後も国際社会の主体であり続ける、
    2. 今後の安全保障は、小さな紛争に迅速に対応する能力が求められる、
    3. 広い意味での日本人、日本にシンパシーを持つ人を増やすことと、高等教育の基礎をきちんと教育することが必要である、
    等の指摘があった。
    また、伊藤教授からは、
    1. 日本の進むべき目標が明確な時代には、配給型経済原理が有効に機能したが、今後は社会全体としての目標設定が困難であり、選択の自由、試行錯誤を重視するアメリカ型の分権型社会の原理に移行すべきではないか、
    2. 国という概念が希薄になりつつあるが、日本とは何かというアイデンティティーも大切にしなければならない、
    等の指摘があった。
    両教授の話からも、また欧米の動向からも、21世紀においてNGOが社会において大きな役割を果たす存在になることは間違いがない。

  3. ジャパン・プラットフォームが本格稼働
  4. このようにNGOへの期待が高まる中で、5月31日に「ジャパン・プラットフォーム評議会」が発足した。「ジャパン・プラットフォーム(以下JPF)」は、日本のNGO、政府機関、企業、メディア、助成財団等の各分野を代表する個人や団体が、海外で発生する紛争や自然災害において困難な状況におかれた難民、被災者に対して、特に初動活動段階で、より迅速かつ効果的な人道援助を展開することを目的としている。さらに、本活動を通じて、21世紀における日本の「市民社会」の発展に寄与することを希求している。
    JPFは、全体方針や活動の方向性等を定める「評議会」と、緊急支援事業を行う「NGOユニット」からなる。評議会には、NGOユニットの代表、外務省、経団連、助成財団、学識経験者等が参加している。
    今年1月26日に発生したインド西部大地震に際しては、臨時評議会を開催し、緊急支援活動の対象とすることを決定した。経団連1%クラブも企業に支援を呼びかけ、寄付、物資提供、輸送サービスの提供等、連携による支援が行われた。JPFのその活動ぶりはマスコミでも大きく報道された。
    評議会の発足により、JPFは本格的に動き出すことになる。企業におかれても積極的な支援をお願いしたい。

    ジャパン・プラットフォームのホームページ(http://www.japanplatform.org/


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