経団連くりっぷ No.152 (2001年7月26日)

社会貢献推進委員会(委員長 武田國男氏)/7月4日

時代とともに変遷するフィランスロピー

−アジア財団 アンドリュ−・ホルバート日本代表よりきく


「良き企業市民」を目指す企業は、歴史・時代の変化に応じて社会貢献活動をより効果的に実践することを常に模索してきた。そこで当委員会では、アジア財団 アンドリュー・ホルバート日本代表より、歴史的事実として冷戦後に変遷してきたアメリカの財団活動について説明をきいた。その後、社会貢献担当者懇談会の活動状況を報告し、新たな段階に入った、今後の社会貢献活動の課題について懇談した。

  1. ホルバート代表説明要旨
    1. 歴史に学ぶ
    2. サンフランシスコ講和条約調印50年目の今年は日米両国の過去を顧みる好機である。第二次世界大戦後の冷戦下、アメリカでは、政府、民間ともに、共産主義に対抗して、アジア人の「心と精神」のために闘うという雰囲気が強かった。そこでアジア財団、ロックフェラー財団、フォード財団などは、日本の知識人、文化人を対象にして、その人々が世界を知るための活動を支援した。文化人の招聘、国際文化会館の建設、奨学金の支給などがその例である。

    3. 冷戦によって成熟した財団活動
    4. アメリカは、冷戦によって突然世界を知らねばならない状況に置かれ、財団の活動も国際的視野を持って展開されるようになった。それ以前の財団活動は必ずしも高い評価を得ていなかったが、冷戦を機に、国務省などから優秀な人材が財団にプログラム・オフィサーとして入るようになり、助成先の審査も次第に確立していった。

    5. 日本の企業財団への提案
    6. 海外貿易依存度の高い日本にとって、企業財団が国際的視野を持って活動することは意義がある。それなくして会社の評判に貢献するような活動の展開は難しい。一方で、企業財団が、会社中心の価値の束縛から抜け出すことも求められている。そのために、財団は、助成先に対して資金提供のテーマを明確に示し、それに基づいて厳しく審査することが必要で、専門職としてのプログラム・オフィサーが重要な鍵となる。

  2. 今後の社会貢献活動
    1. 『この発想が会社を変える』の発行(16頁参照)を出発点として、社会貢献活動を「社会的責任」や「コーポレートブランド」とどのように関連づけて実践していけるか、今後、懇談会で検討する。

    2. 企業に対する評価軸が変化する中、社会貢献担当部署としては社会的責任を担う他の部門との連携を進め、新たな体制を提案していくことも必要である。

    3. 企業財団の在り方も含め、社会的課題解決に寄与する、より実質的な効果を持った社会貢献活動の内容を探っていく。

    4. 雇用創出面でのNPOに対する期待が高まっているが、例えば、企業や行政に所属したままNPOで活動できるような、雇用の流動化策の検討も必要である。


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