経団連くりっぷ No.153 (2001年8月9日)

なびげーたー

「アジアにおける『良き企業市民』について」

国際経済本部長・CBCC専務理事 久保田政一


CBCC(Council for Better Corporate Citizenship: 社団法人 海外事業活動関連協議会)では、アジアにおける「良き企業市民」についての検討を深めつつある。その活動の一端をご紹介したい。

CBCCでは、1989年の設立以来、主として米国における日系企業の社会貢献活動の支援を行ってきた。幸い、この間の日系企業の努力により、ほとんどの企業が「良き企業市民」として現地に定着しつつある。そこでCBCCとしては2年程前から活動の範囲をこれまでの米国中心からアジアにも拡大することとし、昨年と今年の2回に分けてタイ、フィリピン、マレーシア、インドネシアに実務レベルのミッションを派遣し、日系企業のコミュニティ・リレーションズの現状について調査を行った。また、これと並行して会員企業を対象に、「アジアにおける日系企業の活動に関するアンケート調査」を実施した。

これらの現地調査ならびにアンケート結果を基に、先般CBCC企画部会では、「アジアにおける日系企業の『良き企業市民』のあり方について」と題する提言を取りまとめた。

この提言では、日系企業は総じてコミュニティ・リレーションズ活動を活発に行っているものの現地における認知度は必ずしも高くないとしたうえで、アジアの場合は特に、各国の多様性(歴史、文化、宗教、政治体制等)、政治動向に充分配慮するとともに、活動が活発化しつつあるNGOへの対応も日頃から準備しておく必要があると指摘している。また、日系企業に対し、コミュニティ・リレーションズ活動に取り組む際には、

  1. 本社による支援の強化、
  2. コミュニティ・リレーションズ活動に対する方針の明確化、
  3. 地域の自立支援、
  4. 積極的な広報活動、
  5. NGOとの対話の促進、
  6. 現地化の推進、
が重要であると提言している。

また、この問題をさらに掘り下げて検討するという観点から、去る7月27日と28日の二日間にわたり、CBCCでは、「東南アジアの情勢変化に企業はいかに対応すべきか」と題するセミナーを経団連ゲストハウスで開催した。

当日は、東京大学の原洋之介教授をはじめ、東南アジア経済の専門家や企業のアジア駐在経験者、米国の環境NGOを招いて活発な意見交換を行った。その結果、

  1. 東南アジア諸国は今後も政権交代を伴う政治情勢の変化はあるものの生活水準の向上に伴い民生は安定していく、
  2. 現地日系企業は、事業環境の改善に向けて現地政府との政策対話を強化すべきである、
等の意見が出された。

CBCCとしては、今後アジアにおける日系企業のコミュニティ・リレーションズの支援を一層強化していくこととしている。会員企業のご理解とご協力を賜れば幸いである。特にまだCBCCに入会されていない企業に対しては、この場をお借りしてご勧誘申しあげる次第である。


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