経団連くりっぷ No.153 (2001年8月9日)

第49回北海道経済懇談会/7月26日

構造改革の推進と北海道の新たな飛躍に関して
北海道経済界と懇談


「構造改革の推進と北海道の新たな飛躍に向けて」をテーマに、経団連・北海道経済連合会(道経連)共催の標記懇談会が札幌市において開催された。地元経済人約150名の参加のもと、経団連側は今井会長、岸・荒木・上島・西室の各副会長が出席し、道経連首脳と最近の経済動向、社会基盤整備、地域産業の育成・強化等について意見交換を行った。

  1. 北海道側発言要旨
    1. 開会挨拶
      泉 誠二 道経連会長(北海道電力会長)
    2. 北海道経済の現状については、消費・生産活動が縮小傾向にあり、失業率も全国で最悪のレベルにある。また、北海道の産業構造を支えてきた公共投資は減少の見通しであり、景気の先行きが憂慮される。
      小泉内閣が掲げる構造改革は、わが国の経済再生に必要不可欠であるが、地方交付税や道路特定財源の見直しの問題等は地方に大きな影響をもたらすものであり、十分な議論を行う必要がある。国には、構造改革を進める一方で、地方での倒産、失業の増大等、過度の社会的摩擦を緩和し、地方の疲弊を極力防ぐ政策を望みたい。

    3. 来賓挨拶
      堀 達也 北海道知事
    4. 北海道では、北海道拓殖銀行の破綻や北海道開発庁の国土交通省への再編等、これまでの発展を支えてきた枠組みが大きく転換を迫られている。こうした中、道では、中央への依存体質から脱却し、「自主・自律の北海道」を築くべく、1998年より、民間主導の自立型経済への転換や地方分権時代に相応しい効率的な行財政システムの確立等に取り組んでいる。
      一方、政府の急激な構造改革は、北海道に対して、地域経済や雇用、地方財政等に大きな影響を及ぼすことが危惧されることから、雇用面でのセーフティネットや地方分権の推進が必要である。また、近年、道州制が地方行政の将来像として提言されているが、現状のまま道州制に移行できる北海道は、地方分権型社会の先駆的自治体としての役割を果たしていけるものと考えている。

    5. 北海道経済の現状と課題
      大森義弘 道経連副会長(北海道旅客鉄道会長)
    6. 北海道経済は全般的に低調で、完全失業率は全国平均の4.3%を大幅に上回る6.3%である。公共事業への依存度が高く、10%事業費が削減されると2万人の雇用に影響が出る。
      こうした、公共投資依存型経済から脱却し、バランスの取れた産業構造を構築するためには産学官連携による研究開発の推進を通じて、製造業を中心とした既存産業の拡充と高度化を図らなければならない。バイオテクノロジー等、北海道特有の知識・技術の集積を通じてベンチャービジネスを促進し、新産業を創造する社会を目指したい。また、豊かな観光資源を活かし、観光産業の振興を図りたい。

    7. 自立・発展のための社会基盤整備
      我孫子健一 道経連副会長(北海道空港社長)
    8. 北海道は200万都市札幌を核とした道央圏のほか、函館、旭川、帯広、釧路、北見・網走等を中核都市とする6つの圏域が独自の生活文化圏を築いている。現在、人の移動の90%、貨物の移動の98%を道路交通に依存しているが、北海道の高速交通体系は全国に比べて立ち遅れており、道の発展のため、少なくとも6圏域が高速道路で結ばれることが不可欠である。
      一方、環境保全の観点からは、クリーンな交通手段である鉄道がますます重要となっている。整備新幹線を北海道まで延長し、北海道と東北の連携を強化すべく、北海道新幹線の意義等について理解を求めたい。また、3,000m滑走路を2本持つ新千歳空港については、ソウルの仁川空港の対抗馬として、国際ハブ空港にするため、整備拡充および有効活用を働きかけたい。

    9. 産業の育成と強化
      横山 清 道経連副会長(ラルズ社長)
    10. 北海道が産業構造の転換によってわが国および世界における経済的地位を確立していくためには、研究開発の促進、研究成果の事業化やその支援等、知的創造活動に適した環境を整備するとともに、5〜10年後に普及拡大が予想される次世代型産業技術を蓄積していくことが必要である。
      道内には、バイオテクノロジーの応用発展性の高い第一次産業、食品加工業等の基盤がある上に、日本で最初の遺伝子治療を行う医療技術があるなど、バイオ産業に有利な条件が揃っている。また、IT産業については、賃料の安さ、交通の便の良さ等によって、札幌駅北口周辺の「北口ソフト回廊」、いわゆるサッポロバレーを中心に、新たなビジネスフロンティアが創出されている。

    11. 国際化へ向けた今後の取組み
      潮田 隆 道経連常任理事(札幌銀行相談役)
    12. 北海道は、アジアと欧米を結ぶ結節点に位置しており、新たなスタイルの国際協力を展開する大きな可能性を持っている。
      例えば、現在、「サッポロバレー」に代表される道内の情報産業が、急速にIT革命が進むアジア諸国と交流・連携することにより、相互補完体制を整備し、新たな文化や事業モデルを創造する「eシルクロード」構想が進行している。
      また、地理的に近いロシア極東地域との経済交流については、北海道の民間企業が中心となり、経済団体、行政の支援を得て「北海道ビジネスセンター」をサハリン州の州都ユジュノサハリンスク市に今春設置するなどの取組みを行っている。

  2. 経団連側発言要旨
  3. 西室副会長より今後の社会保障改革に向けた取組み、荒木副会長よりエネルギー政策の重点課題への取組み、また、岸副会長よりIT革命推進に向けた取組み、上島副会長より戦略的な通商政策の推進とロシアとの経済交流について説明があった。
    最後に今井会長から、北海道におけるさまざまな取組みを踏まえつつ、経団連として構造改革に向け積極的に取り組んでいくとの総括があった。


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