経団連くりっぷ No.153 (2001年8月9日)

日本ブラジル経済委員会(委員長 室伏 稔氏)/7月9日

日本は大国ブラジルにもっと注目を

−外務省 西林 中南米局参事官よりブラジルの政治・経済情勢についてきく


日本ブラジル経済委員会では2001年度総会を開催し、2000年度事業報告・収支決算、2001年度事業計画・収支予算を審議し、承認した。当日は、外務省の西林万寿夫 中南米局参事官より、最近のブラジルの政治・経済情勢等について説明をきくとともに懇談した。

  1. 政治情勢
  2. 1995〜99年の第1次カルドーゾ政権は、レアルプランの導入などでインフレを抑え、高い評価を得た。カルドーゾ大統領は決選投票なしで再選を果たし、現在2期目に入っている。第2期政権が発足してからは、1999年1月のレアル切り下げの経済的影響を最小限で乗り切り、支持率を上げた。しかし、最近の電力危機の影響で、支持率は低下している。
    来年10月の大統領選挙に向けた動きはまだ本格化していない。左派労働者党(PT)のルーラ名誉総裁、ブラジル民主運動党(PMDB)のイタマル・フランコ元大統領、ブラジル社会民主党(PSDB)のセーハ保健大臣などが大統領候補として取りざたされているが、今のところ本命はおらず、今後の動きを注視する必要がある。

  3. 経済情勢と電力危機
  4. ブラジルの2000年の経済成長率は4.46%と、景気は順調な回復を見せた。また、インフレ率も5.97%と1994年以来の低い数値となった。
    しかし、今年になって渇水による電力危機が発生し、レアル安やアルゼンチン経済の悪化と相まって、ブラジル経済のムードは悪くなりつつある。電力不足への緊急対策としては、対前年比20%の節電目標を掲げている。電力不足の直接のきっかけは、雨季の降水量不足である。ブラジルでは、全発電量に占める水力発電の割合が90%を超えており、電力不足は予期された事態であり、構造的問題だといえる。送電網の整備や水力以外の発電所建設の計画はあるが、電力不足は今後2〜3年は続くと思われる。ただし、この問題を通じて、国民の意識が高まった側面はあり、20%の節電目標をほぼクリアするという結果につながった

  5. 明るいブラジルの将来展望
  6. 電力危機以降も、欧米、特にスペイン、ポルトガルをはじめとする欧州全体の対ブラジル投資は、非常に活発である。また、中国もブラジルに大きな関心を示しており、要人の来伯が続いている。一方、わが国は70年代と比較すると、ブラジルへの取組みは十分とはいえない。ブラジルのGDPは、ASEAN(東南アジア諸国連合)全体のGDPに匹敵する規模であり、中長期的には経済の見通しは明るい。昨年、経団連の尽力で出された「21世紀に向けた日伯同盟構築のための共同報告書」の実現に向けて取り組むとともに、日本全体がもっとブラジルに対して注視する必要があると感じている。


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