経団連くりっぷ No.153 (2001年8月9日)

むつ小川原開発推進委員会(委員長 前田又兵衞氏)/7月17日

国際熱核融合実験炉(ITER)の最近の状況と今後の展望

−むつ小川原開発推進委員会総会にて内閣府の青山参事官から説明をきく


むつ小川原開発推進委員会は総会を開催し、2000年度事業報告・収支決算、2001年度事業計画・収支予算、監事交代案を審議し、承認した。当日は総会の審議に先立ち、内閣府の青山伸 政策統括官付参事官から、青森県がむつ小川原への誘致活動を行っている国際熱核融合実験炉(ITER)の最近の状況と今後の展望について説明をきいた。

○ 青山参事官説明要旨

  1. 核融合研究開発を振り返ると、着実に進展してきたといえる。日本のJT60などでの臨界プラズマの達成という科学的実証を踏まえ、ITERでは工学的実証へと進む。核融合炉開発は、エネルギーセキュリティ・安定性、地球温暖化防止、安全性、国際協力、基礎科学・産業分野の技術進展における波及効果といった点で意義を有している。

  2. 5月18日にはITER計画懇談会が、今後のわが国のITER計画への取組みに関する報告書を取りまとめ、原子力委員会に提出した。報告書に「わが国がITER計画に主体的に参加するだけでなく、設置国になることの意義が大きいと結論した」と盛り込まれたのを受け、原子力委員会では、

    1. 「サイト選定調査」を行い、わが国にサイトとなり得るところがあるかどうかを見極めること、
    2. 他極の状況の把握に努めるとともに、ITER計画がわが国の利益を最大化するものとなるよう他極と協議を行うこと、
    が必要と考えた。原子力委員会の報告書を受けて、文部科学省は国内のサイト候補地を調査するために委員会を設けて、ITERのサイト候補地に関して提出された提案に関して検討を始める。

  3. ITERの建設期間は10年間、実験炉本体の建設費は5,000億円と見積もられる。ホスト国となれば4,000億円、海外での建設となれば2,000億円の負担となるといわれている。運営費は700億円で、締約国で負担するとされているが、実施体制については、今後、細部にわたり協議していく予定である。運転期間は20年で、この間、毎年300億円の運転費用が生じる。実験終了後は5年間の除染期間をかけて3万9,000トンの低レベル廃棄物の処理等を行う。

  4. 欧州はITERをサイエンス・マシーンとして扱い、プラズマの状況を探求する点に開発の力点が置かれているが、日本はエンジニアリング・マシーンとして捉える傾向が強い。米国には現在、大型実験装置がないため、ITERで燃焼プラズマが達成できるとなると、米国も関心を示すようになると見ている。

  5. サイト候補地はハード面だけでなく、配偶者の生活環境、子弟の教育環境、世界からのアクセスなどのソフトの環境も重要となる。ITERに対する地元の理解、支援も国際誘致では重要な鍵となろう。


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