経団連くりっぷ No.153 (2001年8月9日)

新入会員代表者との懇談会(司会 和田事務総長)/7月23日

新入会員代表者より当会に対する率直な意見・要望をきく


経団連では、新しく入会した会員の代表者から、各企業・業界の当面する課題や要望等をきき、活動に反映させている。当日は新入会員代表者10名および今井会長、和田事務総長ほか事務局役員4名が出席し、率直な意見交換を行った。

○ 新入会員代表者発言要旨

  1. 日本酒類販売 篠田信義 社長
  2. 当社はアルコール飲料を中心に加工・冷凍食品等を扱う総合食品卸である。現下の経済不況は金融緩和策では効果が薄い。従来型とは異なる未来型の公共投資に重点をおいた財政出動による景気刺激策が必要だ。消費者の低価格指向は強く、数量は増加しても減益となる傾向が拡大する気配を見せており、一刻も早い景気回復が望まれる。
    ロシアミッションでは、流通インフラの未整備が目についた。今後の発展に期待する。

  3. ジャパンメンテナンス 加藤孝雄 社長
  4. 当社はマイカルグループの建物管理会社として発足しグループ内売上が過半数を占める。現在は、東京を中心に新規顧客の開拓に尽力している。
    当業界はこれまで堅実に成長してきたが、近年は不況等により伸び悩んでいる。中長期的には、都市化、業務の専門化、オフィス空間拡大等の流れにより市場が拡大するので、一層のサービス強化で対応する。
    官庁入札は、極端な安値で落札される例があるが、最低価格の導入など改善を望む。

  5. ロック・フィールド 岩田弘三 社長
  6. 当社は惣菜の製造販売を手がけている。高齢化社会をむかえ、健康と食生活の関係が注目されているが、食の世界では現在、価格破壊等が進んでおり、大きな地殻変動が進行している。
    企業は斬新な発想のもと、カルチャー、ライフスタイル、デザイン、サービス等あらゆる面を研究し、魅力ある商品を提供すれば、市場も拡大する。お客様に対して買う価値のあるものを未来に向け創造できる取組みが必要だ。また、家畜による環境破壊が深刻だ。家畜の呼吸、廃棄物、餌等が地球温暖化に与える影響を憂慮する。

  7. 第一交通産業 田中亮一郎 社長
  8. 当社は北九州本社を核に、設立後40年で148社のM&Aを行った。エリア規制下ではそれが唯一の効率経営・業容拡大の方法だった。現在、25都道府県にタクシー4,800台、観光バス127台、福祉車輌200台を保有し、不動産販売・賃貸等も手がけている。
    タクシー業界は、小規模事業主が圧倒的に多く、来年2月の規制緩和後は、経営基盤の強弱が生き残りを左右する。運転手の人件費は、全産業平均より約2割低いが、規制緩和による増車が労務面等に与える影響を憂慮している。
    特殊法人改革では、健全な民間業者が悪影響を蒙らないよう目配り願いたい。

  9. ジェイフォン東日本 林 義郎 社長
  10. 当社は1991年の第2次通信自由化により設立され、1994年4月に営業を開始した。
    携帯電話は音声中心のサービスから、メール中心のデータサービスに比重が移っている。また、グローバル化の進展により設備調達等に際しても世界に目を向けており、社員の英語教育に力を入れている。さらに、次世代携帯電話サービスが世界中でスタートしつつあり、ソフトの充実が一層重要視される。より公正な競争環境を求め、顧客に喜ばれるサービスを提供していきたい。

  11. トレンドマイクロ 渡部敏弘 副社長
  12. 当社はネットワーク・セキュリティの専業会社で、14ヵ国に現地法人を有する日本発のグローバル企業である。
    一般的にウイルス対策を含むセキュリティへの認識が低い。対策済という事業所でも、部分的な対応しか講じていないケースが多い。高速化とネットワーク化が進み、瞬時に甚大な被害を蒙る。当社もセミナー等で重要性を啓蒙しているが、限界がある。地方公共団体などは住民台帳等の重要書類を扱っており、意識改革が急務である。

  13. 日本ジーエムエーシー・コマーシャル・モーゲージ 平井幹久 社長
  14. 当社は米国ゼネラル・モーターズの不動産金融部門である。日本ではいまだ銀行による間接金融が中心だが、今後は不動産の証券化など直接金融化の流れが加速する。
    連結納税制度の早期導入を望む。企業は、初期投資の大きい分野と利益確保がある程度望める分野を同時に抱えて事業を展開しており、現行制度は非効率である。企業課税が重い。日本の実効税率は依然高く、海外からの投資に影響がでている。競争力低下に繋がるので、一層の減税が必要である。

  15. コンピュータエンターテインメント・ソフトウェア協会 上月景正 会長
  16. 当協会はコンピュータゲームソフトの業界団体で、デジタルエンタテインメント産業の有力企業が数多く参加している。
    商品が青少年に与える影響を考慮し倫理規定を設け、健全な商品開発を促している。
    また、知的財産保護について頭を痛めている。ゲームソフトは新産業なので、中古品に関わる適当な法律が存在しない。アジア諸国で横行している海賊版の問題も深刻だ。違法業者のみならず各国政府も黙認している面があり個々の企業だけでは解決が難しい。

  17. 電通国際情報サービス 瀧浪壽太郎 社長
  18. 当社は電通とGEの合弁で設立。システムインテグレーターとして顧客の業務プロセスやビジネスモデルを変え、システム化をすすめ、メンテナンスもカバーする。
    構造改革が実行されるとIT産業に雇用吸収の期待が集る。一方、IT産業の不振が景気悪化の元凶だとの報道もあるが、現実にはIT投資には多くの企業がBPRやプロセス改革の一環として積極的であり今後も成長が期待できる。ポジティブな面を強調しムードを高めれば経済環境は好転する。
    構造改革の主体はあくまで民間であり、企業自ら率先して取り組む必要がある。

  19. SRA 丸森隆吾 社長
  20. 業務用ソフトの会社を興し約35年、昨年、東証二部上場を果たした。入会早々、ロシアミッションに参加し、経済分野の他文化面でも貴重な経験を得た。
    情報サービス産業協会設立に参画し、当業界と各界とのパイプ役を務めてきた。企業経営者が経営成績を問われるのと同様に、政治家も公約達成度が一層問われる時代になった。経団連からも情報を得ながら、多様な問題に対処していきたい。


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