経団連くりっぷ No.153 (2001年8月9日)

日本・インドネシア経済委員会(委員長 上島重二氏)/7月18日

インドネシアでは今後も政治的不安定が予想される

−三平 日本福祉大学教授よりインドネシアの政治情勢についてきく


日本・インドネシア経済委員会では、2001年度総会を開催し、2000年度事業報告・収支決算、2001年度事業計画・収支予算を審議し、承認した。当日は、三平則夫 日本福祉大学教授より、大統領弾劾の国民協議会を控えたインドネシアの政治情勢等について説明をきくとともに懇談した。

  1. 三平教授説明要旨
    1. メガワティの位置付け
    2. ワヒド大統領の弾劾審議が迫り、メガワティ副大統領が新大統領に選出されるか、大統領権限の大部分を継承することが確実になってきた。メガワティはワヒド政権下で不満を募らせてきた多数小政党に担がれる形で、権力を掌握しようとしている。

    3. 闘争民主党内の勢力
    4. 闘争民主党(PDI-P)内には、

      1. 現執行部派閥、
      2. 旧執行部派閥、
      3. 企業家党員、
      4. 党エコノミスト、
      5. メガワティの夫のT.キマスのグループ、
      6. 退役将軍グループ、
      の主要派閥がある。この春先までは、NUを中心としたムスリム団体との決定的対立を避けるため、ワヒドーメガワティ体制を2004年まで維持すべしとの主張(b.e.f.ならびに国軍)がメガワティ政権早期樹立派(a.c.d.)をわずかに上回っていたが、その後のワヒド大統領の対応の拙さから、e.などの戦略転換があってメガワティ政権早期樹立派が多数に転じた。

    5. 党外の勢力
    6. その他諸政党は、ワヒドの出身党を除いて、新たな機会を期待してワヒド早期退陣で一致している。「メガワティ大統領」の副大統領ポストをめぐる駆け引きも始まっている。国軍は闘争民主党の退役将軍グループと同一歩調を取ってきたが、現在の流れを容認する姿勢を示している。8月1日の国民協議会では、ワヒドは罷免か、名目だけの大統領で残る妥協かの選択肢があるのみである。一方、メガワティも呉越同舟連立政権で難しい舵取りが予想される。

  2. 質疑応答(要旨)
  3. 経団連側:
    国民の90%がイスラム教徒であるインドネシアにおいて、今後、宗教団体が国内でどの程度政治的に力を持つのか。また、急速な民主化が混乱を招いている現状から、今後どのように、インドネシアにおける真の民主化が達成されると考えるか。

    三平教授:
    ずっと政治的に無力であったイスラム勢力は、ワヒド政権の誕生で、政治的に目覚めた。しかし、歴史的にもイスラム勢力は、1つにまとまったことはなく、必ずいがみ合う形となる。一旦、政治的に目覚めたイスラム勢力は今後の政治の不安要素になると考えざるを得ない。また、現在のインドネシアは議会制民主主義の基礎ができておらず、汚職を容認するミニスハルトが全国にいる状況である。真の民主国家としてまとまるためには10年以上の年月が必要だろう。

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